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エヴァンゲリオンとは何だったのか? エヴァのヒットの理由と呪縛と希望について

新世紀エヴァンゲリオン

エヴァンゲリオンが終わってしまいましたね。

エヴァという作品は、多くの人々を魅了し、物議を醸した作品であったと思います。今回は、そんなエヴァがなぜヒットしたのか? なぜ、世のおじさまやおばさまにはエヴァに魅了されている人たちがいるのか?

そのあたりについて、もう少し細かく解説してみたいと思います。

エヴァのヒットの理由と要因

エヴァという作品は、日本におけるアニメーションの転換点の一つと考えられています。その出現は、ガンダムやヤマト出現匹敵するくらいインパクトのあるものでした。

©khara, inc.

そこにはいくつかの要因があります。

クリエイティブの面でいいますと、ガイナックスというクリエイター集団が生み出した、細部にまでこだわり抜かれた設定や映像のインパクトがありました。

さらに、それらをテレビアニメーションで実現する、新しいビジネスの体制もありました。制作面では、TVシリーズ物で製作委員会方式を採用した、最初期の作品の一つになりました。

内容については、世界の命運と少年の自意識を等価に扱った、世界系のはしりであるとされています。それらの表現を後押しした、実相寺昭雄スタイルの斬新な演出手法も印象的でした。

さらに、作品が物議を醸した終わり方をしたことが影響して、再放送時に記録的な視聴率を叩き出します。これは、後に深夜アニメブームを創り出す影響になりました。

それらをひっくるめて、登場するキャラクターやデザイン、設定世界、制作体制等で、後の作品に多大な影響を与えたのがエヴァという作品です。

©khara, inc.

しかし細かく見ていくと、一つ疑問が浮かびます。

たしかに今見てもすごい作品ではあるのですが、なぜエヴァンゲリオンという作品が、当時オタク層からはみだして、一般層にまで影響を与えた作品になることができたのか?

そこには、社会的な理由がありました。

エヴァという社会現象の背景にあるもの

2000年頃のアニメオタクや漫画オタクというのは、令和の現在に比べると、非常に肩身の狭い思いをしていました。

彼らの社会的な扱いは、最底辺にありました。メディアでも、オタクや、それに類するガリ勉、あるいは少し言動に特徴のある高学歴者というのは、バカにされるような側面がありました。当時はまだ父性価値観の強い時代で、男は男らしくオラつき、女は女らしくあることが是とされた時代でした。

一方で、日本国内は、バブル崩壊の影響から不況の真っ只中にありました。世は停滞し、閉塞し、旧来の価値観では、先が見いだせない時代になっていました。

つまり、皆がどこかで新しい価値観を求めた時代だったんです。そして、オタクたちも、どうにか虐げられた自分たちの立場を変えてくれるような何かを求めていました。

そんなときに登場したのが、新世紀エヴァンゲリオンという作品でした。

当時最先端のクリエイター集団ガイナックスが世に送り出した、エヴァンゲリオンというアニメーションは、多くの人がいままで見たことがないモノを提示していました。世界の存亡と少年の内面を同時に描く作風は、世の人々に大きなインパクトを与えました。

それは、日本を停滞に追い込んでいた古いの価値観を覆す可能性を示しているように見えました。

例えばシンジくんの内証は、当時の人達に、人は自身の存在について深く考えてもいいのだ、というような印象を抱かせました。またゲンドウの提示する人類補完計画は、確かに楽園めいた価値観を提示しているように感じられました。その他にも多く劇中に登場した、様々なアイディア、デザイン、その他諸々のディディールは、旧来のモノをすべて「古くさく、かっこ悪いモノ」とするのに十分な力と新鮮さをもって、視聴者の前に提示されました。

©khara, inc.

当時の古い価値観が、どうにも受け入れられなかったオタクや知識層は、エヴァの描く、そんな世界に興味を持ったんです。エヴァは、自分たちの探している、新たな価値観を提示してくれるんじゃないか? そういう、期待感を感じたのです。

当時、みんな思ったです。あれだけのクオリティの作品なのだから、何か大変価値のある新しい思想を教えようとしているはずだ、と。ガンダムやヤマトが出現した時は、確かにそういう側面がありました。だからエヴァにも何か思想めいたものがあって、それを提示しているだろう、誰もがそう思って、読み込んで、掘り下げて、考察したんです。

同時期の似たような事件でいうと、例えばオウム的な新興宗教も、知識層に対して同じようなものを提示していました。しかしエヴァは、より広く一般層に提示されていました。

そういう期待感を、多くの人に見せることに成功したのがエヴァであり、エヴァがヒットした社会的な要因の背景として、存在していたものになります。

エヴァが監督とファンにかけた呪い

しかし、ここで一つ事件が起きます。

多くの人々は、エヴァに新時代の価値観や答えを求めたのですが━━実はそこには、何の答えもありませんでした。

後年よく言われた話ですが、エヴァンゲリオンという作品は、極めて衒学的な作品です。答えのない物語だったのです。監督をはじめ関わったクリエイターの才能は素晴らしいものですが、実は彼らは、何か世の中にメッセージを送るために作品を作った訳ではありませんでした。

エヴァ以前の制作者というのは、作品に取り組むときに、社会的なメッセージを込める世代です。旧来のクリエイターは学生運動を経てきた世代であり、何かを表現する際に思想を提示することを当たり前に行っていました。

ところが、エヴァという作品は、あれだけのクオリティを示して置きながら、その根底には思想が存在しません。

©khara, inc.

庵野秀明とガイナックスのクリエイティブ集団がやったのは、オタク的アニメーション設定や技法の追求であり、思想の追求ではなかったんですね。

エヴァに関わったクリエイターは、学生運動世代ではなく、オタク世代です。彼らは旧来の作品の技法を見て、それを超える技法を持った作品を作れればいいと考えていました。そのせいで、エヴァというのは、すぐれたクオリティや新規制を技法としては示しながらも、思想としては何の答えも提示しない、衒学的な作品になっていたのです。

これは、旧作において監督の庵野秀明自身を苦しめるものにもなりました。

答えの出せない監督は、TV版のラストにおいて迷走し、またファンも、長きに渡ってエヴァ的なものに囚われることになりました。

この決着は、結局24年後のシン・エヴァンゲリオンまで持ち越されることになってしまったのです。

オタク的新世紀はどこに向かったのか?

シン・エヴァンゲリオンが完結するまでの間、ファンと碇シンジくんは、その場でずっと足踏みすることを強いられました。

しかし、時は流れます。世界はその間ゆっくりと変化していきました。

インターネットの発達により、世界は均質化が進み、エヴァが提示した方法とは別のやりかたで、世の中の補完計画が進みました。

その中で、古い価値観の中で隠されていたものが暴かれました。

同時に多くの人が同じ情報を享受し、均一化した知識にたどり着くチャンスを得ることができるようになりました。世界の「なぜ?」に解説がついてまわり、それぞれ個人が、古い価値観とは異なった、答えを見出し始めました。

世界は、人類補完計画のように相互に均一化するのではなく、個別に有り様を肯定する時代へと突入したんです。

オタクやアニメファンや、エキセントリックな言動を抱えた人たちも、そんな他者を肯定する世相のなかで、他者を害さない限りにおいては、ごく当たり前の存在となりました。

アニメーションの世界でも、新海誠の君の名はや鬼滅の刃のような、エヴァを超えるヒット作品が現れはじめました。

©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

訪れた新世紀は、想像した新世紀とは違いました。ですが、確かに価値観の変化が起こったのです。

そして、エヴァンゲリオンという作品も、その変化に対応する形で、自身を肯定する答えにたどり着いて完結したというのが、シン・エヴァンゲリオンという結末の形なのだと思います。

エヴァって何だったんだろう?

エヴァンゲリオンという作品が終わったあとで、改めてエヴァという作品を振り返ってみると、あれは一体なんだったのだろう? と思うことがあります。

技法を突き詰めつつも衒学的だったエヴァは、単なるサブカルチャーの狂騒だったのではないか? 思想を持たなかったという点においてはそうかも知れません。ですが一方で、エヴァという作品は、人々を刺激するという点においては十分すぎるほど成功していました。

エヴァというのは、面白いとかつまらないとかいう話以前に、日本のカルチャーを刺激し、空気感を醸造し、人々の価値観に変化の糸口を与えた作品なのです。

それは、今にして思えば、人や社会や経済やカルチャーにおいて、奇跡的な偶然が重なってそうなったのだと思います。

©khara, inc.

だからこそ、製作者側も視聴者側も困惑し翻弄されたのだと思います。そういう作品は、過去にも、なかなか存在しないですよね。ようすするに、エヴァンゲリオンというのは、アニメーションでありながらも、そんな奇跡が生み出した作品──というか現象なのだと思うです。

同時期にそんなエヴァという現象をリアルタイムで体験できたことは、ちょっと素晴らしいことだと思うんですよね。

追記:You Tube動画版を下記に。

結局、エヴァンゲリオンとは、何だったのか?

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