かぐや様〜藤原千花、実は危ういバランスの上に立つ奇跡のキャラクター

かぐや様は告らせたい
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藤原千花は「かぐや様は告らせたい」の舞台秀知院学園生徒会における書紀ですね。主人公四宮かぐやの友人であり、生徒会主要メンバーの一人にして、物語上でもいろいろな意味で重要なポジションに立っているキャラクターです。

特徴はそのピンクの髪にリボンと恵まれた体躯、そして突拍子もないキャラクターです。

属性過多な藤原千花

ぱっと見た感じは、漫画やアニメにおけるキャラクターテンプレのオンパレードというか、けっこう属性過多ですよね。胸が大きく、天真爛漫で、アホで、リボン、ピンク、ふわふわ、天才肌、ママ、天然。愛される要素が沢山つめこまれていて、作中でも主人公らに引けを取らない人気キャラクターです。

彼女は、物語をかき回す役割を請負い、主人公の四宮かぐや、白銀御行らを辟易させます。しかし、トラブルメーカー専門という訳ではないし(毎回トラブルを持ってくる訳ではない)、狂言回しという訳でもない(司会進行そんなにしない)、あくまでも、かぐやと白銀の恋の頭脳戦を掻き回す役割として存在し、彼ら二人だけでは停滞しがちな物語を広げるポジションにある。

謎の存在感

さて、この属性マシマシのふわふわ藤原千花ですが、一見すると、過去キャラ類型の延長にあるようにみえます。たとえば、キャラ造形でいうと、ToLOVEるのヒロイン「ララ・サタリン・デビルーク」とか「艦これの夕立」とか天才っぽいところと天然っぽいところ、身体が恵まれているあたりもかぶっていたりと、そんなに珍しいキャラクターには見えない。ただ細かく見ていくと、どうも存在感がある。使い潰されるテンプレキャラクターの典型のように見えつつも、キャラとしての強度がある。ララや夕立や、その他のピンク髪ヒロインのように、ちょろい感じで物語にとりこまれてしまうような、都合の良さがない。肝心なところでは媚びるところのない強さがある。

そもそも本当に「ピンク髪ヒロイン」の系譜なのかもちょっと疑問であったりします。ちなみに原作だと初期の姿は銀髪でありピンクではなかったりします。自由で、天才で、天真爛漫。一番似ているキャラクターはなんだろう、何かに似ているなぁ? と思って考えた結果、賛否あると思いますが似ている子は一人思い浮かぶ。天才で、天真爛漫で、天然で、巨乳。


野田恵/のだめカンタービレ

のだめは、ある種のリアリティを付与された少女漫画ヒロインですね。何がいいたいのかと言うと、僕的には藤原千花も少女漫画の出演にも耐えうるくらいの、キャラとしての強度や奥行きを持っていると思える。なんなら四宮かぐや以上に。ま、この話は蛇足ですが。

藤原千花はサブキャラ? メインキャラ?

さて、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、藤原千花は「かぐや様は告らせたい」の劇中でかなり優遇されています。どう優遇されているかというと──アニメ専用EDがつくられたり、藤原ラーメン回があったり、ゴキブリを手で掴んだり、スピンオフの公式ゴニョゴニョ同人で一巻の表紙を飾ったりとか──そういうことだけではなくて、そもそも藤原千花は、脇役ではなくて「かぐや様は告らせたい」内における正ヒロインだったりします。

「かぐや様は告らせたい」の主人公はダブル主人公であり、白銀御行と四宮かぐやが主人公にあたります。つまり四宮かぐやは白銀御行の対になるヒロインではなく、主人公という扱いなんです。そして、代わりに藤原千花が、四宮がくや&白銀御行に相対するヒロインに位置します。なんとサブキャラかと思いきや、藤原千花はメインなんですよね(ちなみに石上くんは裏主人公だよね。ミコは・・・・・・うん、サブキャラからまだ抜けられていないね)。もっとも、群像劇めいた側面もある「かぐや様」なので、そういう分類が意味を成すのかというのは、ありますが。

そして、藤原千花はヒロインだから優遇されていてキャラが立ち強いのか? もちろん、それもあるんですが、実はもう一つ「かぐや様」という物語だけがもつ構造が、藤原千花をあやういバランスの上で魅力的にしている理由が存在します。

ラブコメから自由なヒロイン

「かぐや様は告らせたい」はラブコメディです。時にベッタベタの甘々な展開をぶっこんでくる、青少年の主に男子をターゲットにした、正統派学園ラブコメディです。しかし、ラブコメパートはこの物語においては、すべて白銀御行と四宮かぐやが請負い、実はヒロインクラスのポジションにあるにもかかわらず、藤原千花はラブとは無縁です(今の所)。

で、青少年向けのラブコメディというのは、ちょっと恐ろしいところがありまして──時に女性キャラを物語のために使い潰すんですよ。たとえそれがヒロインであっても、男子目線の都合の良い狭苦しいキャラクター造形に押し込まれてしまうことがある。あるいは展開によってどこかへ追いやられる。あるいは負けヒロインとして、ファンの期待を裏切る。

五等分の花嫁も、ニセコイも、主ヒロインは、物語上の都合の良い役割と、都合の良い喜怒哀楽を強いられる。負けるヒロインが出る。とくに、男性主人公の物語だとその傾向は大いにあると思います。女のコは恋においてこうでなければいけない、これがかわいいよね、こうなると切ないよね、という枠に収められる。物語の決着のために、使い潰される。本編においては、それはそれでいろいろなファンのニーズを満たすんですが、キャラによってはテンプレに押し込められ、消費されてしまう。

ところが、この物語はそれがない。まず四宮かぐやは主役側でもあり強固な主体です。絶対に使い潰されていない。白銀御行もしかり。しかも女子キャラを疲弊させて貶める、恋愛沙汰は作品上でこの二人が一手に引き受けている。するとどうなるか──藤原千花は学園ラブコメもののヒロインクラスの最高待遇を受けているにもかかわらず、面倒くさい「恋愛漫画」における「女子の振る舞い」や「負けヒロインの消費」という縛りから自由なんですよね。

これが、僕はラブコメにおける藤原千花がとんでもなく自由に振舞い魅力を発揮している理由だと思っています。ちょっと考えた感じだと、あまり無いんですよね、少女漫画でもなく、萌え要素すらあるラブコメのメインヒロインクラスで、ここまで自由なキャラクターって。

解き放たれた無敵の藤原千花

さて、ラブコメから解き放たれた負けないヒロインがどうなるかというと、恋愛沙汰は四宮かぐやと白銀御行にまかせっきりになります。そして劇中パートナーのいない藤原千花は、視聴者や読者、そして関係スタッフの寵愛を受けることになります(石上くんが相手かと思いきや石上くんには先輩やミコがあてられた)。

誰のものでもない藤原千花を誰もが求めます。四宮かぐやは白銀御行のものですが、藤原千花ならフリーです。藤原千花のその役割、存在は、キャラの使いやすさもあって、恋愛以外の様々なところに、作品を広げるための装置として、ひっぱりだこになる。さらなる魅力をふりまくことになるのです。

このポジションは本当にあやういものです。もし四宮かぐやと白銀御行の恋模様に藤原千花が参入したらどうなるか? 2ndヒロインとして、恋は成就せず、良くわからない泣き顔をみせて、そこいらのテンプレ女子キャラと変わらない雑な扱いを受けて、使い潰される運命になる。そんな藤原千花は絶対に見たくないですよね。ですが幸いにして、藤原千花が四宮かぐや白銀御行と三角関係になることは無さそうです。

そんな訳で、恋に縛られない藤原千花は、引き続き類を見ない無敵のヒロインとして存在し、今日も輝いているのです。

 さあ、あなたも藤原千花の魅力にハマってみましょう