まどマギ続編決定記念〜なぜダーク魔女っ子ファンタジーがウケたのか? ヒットの理由考察

魔法少女まどかマギカ
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魔法少女まどかマギカの劇場版の続編「〈ワルプルギスの廻天〉」が決まりましたね。

まどマギがTV放映されたのは、2011年ですから、この作品がヒットしたのは、およそ10年前になるんですね。あれから、劇場版やゲーム派生の作品がありましたが、今回はそんなまどマギという作品がなぜウケたのか解説してみたいと思います。

「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉」公式サイト
新房昭之×虚淵玄(ニトロプラス)×蒼樹うめ×シャフトによる『叛逆の物語』の正統なる続編――そして、新たな始まり。『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』2024年冬公開予定

大枠はわかりきった話だと思いますが、私が思っているもう少し細かい、成功理由について解説。

まどマギ放映時の状況について

まとマギという作品の魅力は、みなさんご存知のとおり、蒼樹うめ先生のファンシーな絵柄と、脚本家虚淵玄先生のダークなお話、という相反するモチーフが組み合わさっていたところが魅力でしたよね。そこに、新房昭之監督のシャフト的ケレン味のある演出と、イヌカレーの謎におどろおどろしい切り絵の世界観があわさって、今まで誰も見たことがない、ダーク魔法少女ファンタジーに仕上っていました。

実は、このまどマギという作品ですが、当初は「蒼樹うめ×虚淵玄」という組み合わせが、疑問でしかなくて、前評判もよくなかったのだと言います。

その評価は第三話まで変わりませんでした。

しかし、皆さんご存知のとおり、第三話でマミったことによって、物語は予想外の展開へと突入し、多くの視聴者の注目を浴びることになります。

登場する魔法少女たちは、血反吐を吐くような状況に追い込まれ、最終的に見事な結末へとたどり着きました。これによって、まどマギはその評価を不動のものとしたのは、皆さんご存知のとおりです。まどマギは、見事可愛い系萌えキャラクターアニメーションを、もう一つ上のステージへと進めたのでした。

当時の大枠の作品の状況は以上のとおりです。ここからは、もう少し細かい話を時代背景や、造り手たちの状況を踏まえて解説したいと思います。

新時代のクリエイターが作った作品だった

まどマギという作品を作ったのは、だいたい60年代〜70年代生まれのクリエイターたちでした。世代的には、庵野秀明等のガイナックス世代よりも少し下になります。

エヴァの放映から10年後に発表された作品で、深夜アニメが粗製濫造され停滞していた時期に放映されました。

当時、まどマギがアニメ業界に新風を巻き込んだのは皆さんご存知のとおりですね。

そんな60年代クリエイターさんたちの特徴はゲーム世代ということです。それもPCゲーム、いわゆるギャルゲーやエロゲーに慣れ親しんだ世代でした。ガイナックスや庵野秀明が、ヤマトやガンダム以後のTVオタク世代だとしたら、虚淵玄というのはゲームオタク世代ってことですね。

皆さんご存知のとおり、虚淵玄は、ゲームシナリオライター出身です。

そして、まどマギにおける、ほむほむが体験したリセットしてのセーブポイントからのループ構造というのは、まさにPCのノベルゲームそのものですよね。まどマギ自体もそのPCのゲーム的物語構造を色濃く反映していましした。これは、旧来の脚本家にはない視点でした。

このループ的構造の作品というのは、まどマギあたりから意識的に、同時多発的に作られましたよね。おなじような構造をもった作品を、みなさんは数多く知っていると思います。

ただ、あのゲーム的ループ構造を一番最初うまく物語に取り込んで、多くの人に届く形で見事にやってのけたのがまどマギでしたよね(シュタゲもありますが、あっちは原作がPCだと分かっっていたことから、ややマイナーなままになってしまいました)。

これらクリエイターたちの状況を踏まえると、ヒットの理由は明快です。

ヒットの理由についてのもう少し細かい話

まどマギがウケた理由は明快です。

それは先に述べたとおり、蒼樹うめ×虚淵玄のギャップ、新房昭之監督×イヌカレーの独特の演出、そしてゲーム的ループ構造の斬新さ。それらが高度に組み合わさった、ダークファンタジーだったことですね。

まどマギは、それによって停滞していたアニメ業界に、見事に新しいものを引き入れました。

ただ、細かく言うと、ヒットの要因は、もう一つあると思っています。先に上げた高度に組み合わさったというあたりに本質があると思っています。それは、何か?

やっぱりまどマギというのは、諸々ひっくるめてTVシリーズ版の「シリーズ構成」の完成度の高さが凄いと思うんですよ。まどマギは、オリジナルアニメーション作品において、構造的にみごとな起承転結やってのけた、近年まれに見る作品だと思っています。

例えば、エヴという作品は衝撃でしたが、お話の展開や構成としては意味不明でしたよね。あるいはガンダムとかもそうです。ガンダムの劇場版三部作は綺麗にまとまっていますが、TVシリーズのほうは50話を超えることから、不必要なエピソードもあり冗長でした。

基本的にTVシリーズというのは「まとまらない」んですよね。まどマギのような、全12話で綺麗にまとめてきた作品というのは、これまで、なかなか存在しなかった。

それは、同じダークファンタジーのマギアレコードど対比することでも顕著に見て取れます。あの作品も設定はまどマギと変わりませんが、どうも印象が薄かったですよね。それに構成的には終わってすらいないですし。まだ完結していないゲーム派生であったために、構成に制限がかかっちゃっているんですよね。それが、作品を冗長なものにしてしまった。

基本的にアニメシリーズというのは関係各所の影響を受けます。その結果、よくわからない調整のために無駄な回は発生しますし、テコ入れ回と称して、本編とは関係ない、謎の捨て回が発生したりします。ナディアやエヴァですらそうでした。

対して、まどマギという作品は12話としては、もうパーフェクトともいえる、まとまりのある構成になっていました。オリジナルアニメーションという恵まれた環境があったことで、脚本家の虚淵玄や監督たちの才能がいかんなく発揮されていた。捨て回が存在しなかった。最初から最後までジェットコースターのような作りになっていた。

これは虚淵玄を使ったということで、有利な点が一つあったと思っています。

ノベルゲーム出身の作家というのは、マルチエンディングを作るために、お話の整合性をとるのが本当に美味い。伏線を張り巡らせてパッケージ作品を作る能力がとても優れている。そういう頭の使い方になれているんでしょうね。それがシリーズ構成に見事に現れていた。まどマギはTVシリーズでありながら、本当に洗練された、恐ろしくシェイプされた構成をしていましたよね。これが野島伸司だとそうはならなかったでしょう。

以上「シリーズ構成の完成度」という点が、数多の作品群の中でずば抜けていたこと──これが、まどマギを特別なものにしている理由だと思っています。

あらゆる状況的・設定的な質の高さが、見事な構成の内に収められていたからこそ、ヒット作たり得たんだと思っています。

さてはて続編はどうなるの?

さて、まどマギは正当続編が発表されましたね。

タイトルは、魔法少女まどかマギカ「ワルプルギスの廻天」だそうです。

前回の劇場版「叛逆の物語」で、まどかたちはホムホムのインナーワールドに囚われたままになっていましたよね。つまり、お話としては、そこから抜け出して、さらに別のハッピーエンドに向かうと思われます。

スタッフは続投でしょうから、つまらなくなることはないでしょうけど、一つのハードルとしては、自分たちが生み出したTV版が立ちはだかりそうです。

正直、TV版まどマギの構成を超える作品というのは、まどマギであれ他のものであれ、かなり難しいと思うんですよね。

さてはて、新作のまどマギには、果たしてどんな物語的アイディアが詰め込まれるか?

上映が楽しみですね。