オッドタクシーという面白い作品が生み出された背景ついての考察

オッドタクシー
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オッドタクシー、見ましたか?

昨今まれに見るクオリティをもった良作でしたね。

何故こんなにも面白い作品が出てきたのか?今回はその作品の背景に解説。

まず、オッドタクシーはなぜ面白いのか?何故面白かったのか?

それはもちろん、脚本がよくて演出がよくて、キャラデザインがとっつきやすく、提供される楽曲は親しみやすく、会話は小気味よく、とにもかくにもトータルで高品質だったからです──などと言ってしまうと身も蓋もありませんけどね。

すべての要素は、間違いなく高度に噛み合っていましたが、重要なのは、それが、ワンクールのアニメーションで提供された、ということの方だと思っています。

客観的に見て、オッドタクシーの脚本というのは、子供向けではありませんよね。少なくともハイティーン以上で、なんなら中高年層もターゲットに入れうる幅の広さを保っています。で、本来、こういう作風というのは、昔はTVドラマの独壇場だったわけですよ。

かつてアニメーションというのは完全に子供向けであり、子供だましであり、ドラマや映画の実写のほうは、大人を騙して──楽しませるための作品が溢れていました。

しかしオッドタクシーは子供向けではない、構造的で面白いドラマです。オッドタクシーのドラマの脚本というのは、「実写より」の、丁寧な構成です。ワンクールを通して、各話にキャラクターを配置し、伏線を張り、それらを丁寧に回収していく。

こういう重層的な物語構造をちゃんとやっているアニメというと、過去においてはまどマギとか、中村かずき脚本の作品とか、最近だと体操ザムライとか、あとは連載ものなのになぜか重層的やれてしまっている進撃の巨人とかあるんですけど、アニメだとどちらかというと稀です。

それは、そういう作品が求められていなかったから&ちょっと通常とは違うスキルが求められたからというのがあります。で、旧来でいうと、こういう重層的でかつ社会性もあるお話はTVドラマの仕事だったりしたのです。

ですが、TVでは久しく、こういった物語はつくられなくなってきています。最近は刑事モノか恋愛モノか、コミック&小説スピンオフのミステリかというくらい。ありものを加工する流れですね。オリジナルはずいぶんと減ってきている。

さて、なぜTVで良質なオリジナルドラマが作られなくなったのか?

TVでちゃんとドラマを作るというのは、アニメと同じかそれ以上にお金がかかるものなんですが、昨今はTV局が弱っているので、チャレンジ精神溢れるものが作れないんですよね。

それにTV局というのは、予算以上に面倒くさい話があります。それは、どのタレントを使ってドラマをつくるのか? という話です。

実写ドラマのキャスティングというのは、出資者とスポンサーに絡む形で芸能事務所というのも強く関わってきます。これが、日本のドラマ制作を身重なものにしている側面があるんです。予算があれば、そういった状況でもゴリ押して、ドラマを売り切ることが出来ましたが、今は強引なキャスティングに低予算だと、滑った時の局のダメージがでかい。

だから、実写ドラマではオリジナル作品や野心的・実験的作品のチャレンジがしづらい、という状況があります。

ところがアニメーションだと、キャスティングの制約が低く、さらにお金がかかる舞台設定にも自由度があります。オッドタクシーのラストで高速道路から海にタクシーが落ちますが、あんなものTVだと、許可も大変ですしお金もかかりすぎて撮影できないですからね(なお、昔はたぶんやれていました。西部警察とかね)。

つまりは、日本においてはメディアの構造上の話から、良質な大人も楽しめるドラマが──というか良質な映像作品を創りたいクリエイターが、アニメーションに流れてくるというのは、必然の流れ友言えます。

ええ、クリエイターはいるんですよ。今も昔も。そして市場の構造変換が昨今起こっている。世代交代も進んでいる。

昨今の日本においては、急激に実写の市場はシュリンクし、アニメーション方面は逆にマネタイズのチャンネルが増えている。出資者もネトフリとか、そういうところもでてきました。ようするに、幅広いコンテンツが提供できる環境が、アニメーションの側にも揃ってきているのですよね。それもあって、TVというジャンルに拘泥する必要がない。そういう環境においてオッドタクシーというのがポッとでてきた。

さらにこの作品は一つの成功例を示しものになっています。これは本当に素晴らしい結果だったなと思うのです。

これを皮切りにして、今後もさらなる良質なアニメ発のドラマの発生が予想されます。

もちろん、私は実写も好きなんですけど──それはそれとして、アニメ側もドラマが重厚になるのは楽しいことです。

以上、オッドタクシーの背景についてのお話でした。

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