ホリミヤ雑感〜宮村が繰り出す恋愛マンガにおける夢物語とリアリティについて

ホリミヤ
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ホリミヤ面白いです。

アニメの方は4話時点で、だいたいの関係性が定まってきました。この先、幾人かの追加キャラクターが出てくるようですが、物語自体はだいたい方向性が定まってきましたね。

さて、今回はホリミヤの主役のひとり宮村 伊澄と彼が生みだすリアリティについて、彼のプロフィールを交えて雑感を少し。

宮村伊澄?

さて──言わずとしれた主人公の一人宮村くんですが、彼のプロフィールって実はそんなに充実していないんですよね。

分かっているのは4月17日生まれ、慎重169cm、地味系のメガネ男子だけど、カラダに入れ墨があり、ピアスで穴を開けている、変わり者。両親はケーキ屋で彼もケーキを作り店頭に立つことも。勉強は出来ないが身体能力は高い。

それから、実はピアスを入れた理由と刺青を入れた理由って、明快に定義されていないんですよね。ノリでやったみたいになっている。個人的には刺青とピアスの「何故」はけっこういい話になる気がするんですが、作者はそこを掘り下げるつもりはないようですね。

見ていて思う宮村のキャラクター特徴

そして、この宮村というキャラは、物語の定石でいうと、ちょっと切り口が新しい。

公式には天然無神経キャラと定義されていますが、旧来の枠組みでいうとイケメンだけど伏し目がちなメガネ男子です。

ただ、御存知の通り「定石通りではない」という設定のために、別の顔としてピアスと刺青というやんちゃな属性が付与されている。さらに、身体能力が高く、喧嘩も多分強い。

面白いのは、宮村というのは、気弱で草食系のメガネ男子の系譜かと思いきや、ベースはフィジカルに秀でたナチュラルジゴロでもあるってことです。過去の経験から、メンタルは気弱で争いを好まないキャラクターになっていますが、根底には折れず揺るぐことのない、ともすれば暴力を厭わない男子がいて、それが優しさと同居している極端なキャラクターになっている。

このキャラに対する要求って、ようするに「自分には優しい気弱な忠犬のようなメガネ男子を求めるが、外に対してはオラついてナメられない存在でいてほしい」というのがありそうですね。で、その結果として、分裂症気味なキャラクターになっている。

あー、そのワガママな要求よく分かる。

しかし、ベースとしては、そういう二面性も含めて作られた改造人間的な、理想化されたキャラクターになっている。

同時に気になる宮村の振る舞い

ただ、そうでない部分が一箇所あります。

それは、宮村がボッチだった過去を思い出す描写の時に現れる。

私は常々、作品というのは、ものによっては、その作者の本質が反映されたキャラクター、作者の分身要素をもったキャラクターが登場すると思っているんです。

そして、ホリミヤという物語は、多くのキャラクターはキャラテンプレでつくられているので、さほど作者の性質というのは反映されていない物語だと思っていました。

むしろ、面白さの要素としては、キャラクターの関係性の新しさでもって提示してゆくスタイルを取っている。

堀と宮村でいうと、クラスの才色兼備の女子が過程的で、陰キャのメガネ男子が実はイケメンで強い子だった、という関係性がベース。キャラクターの心理より関係性におけるアクションとリアクションに注力した物語(女性向け作品に多い)。

ところが、一箇所だけものすごくリアリティをもって掘り下げてきた場所があった。

それが、宮村のボッチ描写とそれに対する反応、展開。

たぶん作者の体験や観察が反映されたボッチ描写

第三話の前半から中盤にかけて、宮村の過去と現在の関係性の対比がなされていました。

過去においては、宮村は変なヤツ、暗いヤツと断じられ、また本人もそういうキャラ付けを、不本意ながらも受け入れている描写があった。

それが、堀京子他と交流するなかで、世界の見え方が変わっていく描写があったとおもうんですけど、その一連のながれだけが際立って、生々しくてリアリティがあった。

あー、これ、体験していないと&過去に似たものを観察していないと描けないやつだよなー、と。

フィクションというのは、時折そういう描写をポッと入れ込むことで、偽物の、架空の物語であっても、とたんにリアリティが生まれて、輝きだして、価値を変えたりすることがあるんですけど、ホリミヤにおける3話の宮村の振る舞いにはそういうものが確かに存在しました。

なるほど、これは人気でるよなぁ、と。

夢物語に込められたリアル

そして、ホリミヤという作品は、たぶん他にも、リアルな瞬間というのを入れ込んでくるんじゃないかと思うんですよね(原作未読なので知らない)。

例えば、同じ3話でいえば、堀京子と宮村が、手を重ねて掴んだ瞬間。その後に遠回しに好きを伝えた瞬間。お互いに手探りで、言葉をかわして好きを確認した瞬間。

あれ、やるよねー。

あのシーン、人によってはフラッシュバックを起こさせるリアリティがあったんじゃないかな。あの場面のあの体験は、実際にあったら2週間くらいハッピーでいられるヤツですよ。

つまり、そんな感じで架空の夢物語でありながら「付き合うまで」のお話ではなくて、付き合った以後を擬似的に再現し、さらにはリアルをぶっこんでくるホリミヤは、わりと稀有な作品だなあ、と思うのですよ。

生々しい。品の良い生々しさ。

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