リコリコ省エネキャラ配置の裏に隠れる、リコリコ最大のへんなキャラ

リコリスリコイル
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リコリスリコイル面白かったですね。

同作は千束とたきなの関係に絞ったシンプルな物語でした。だからこそ登場するレギュラーや準レギュラーの役割がわかりやすい作品でもあります。

今回は主要キャラの物語上の役割を説明しつつそのへんなキャラに言及したいと思います。まずはDAのメンバーから──

ちさたきのひきたて役のDA

リコリコといえばDAです。

DAは物語の世界観を左右する重要な組織でしたね。初期企画においてDAは、ガンスリンガーガールでいうところの社会福祉公社的なポジションとして設定されていました。

しかし、それは製作者側の「暗い作品はウケない」という認識から、主人公の属する組織ではなく背景へと回されます。

メインは喫茶リコリコとなり、DAの役割は、リコリコの当て馬として設定されることになりました。
このあたりは作中で見たとおりですね。

春川フキと乙女サクラ

春川フキと乙女サクラは完全に、千束とたきなに対する当て馬ですよね。赤と青の制服が映えるバディーは、DA側、喫茶リコリコ側それぞれに存在しており、フキとサクラの関係も千束とたきなに通じるものがありました。

もっともDA側ではフキのほうがたきなに近い慎重さがあり、サクラが天真爛漫でしたけどね。

関係ないんですけど、フキはあれで実は大人っぽい下着を着ているというツイートをTwitterでみかけたんですが、なんかぐうわかる。

その他DAメンバー

DA司令の楠木はDAをまとめ、ミカとも意思疎通する存在でした。

彼女はミカに対して一定の敬意を払っているように見受けられました。

蛇ノ目 エリカはたきなに助けられた少女ですが、彼女はたきなとDAの因縁にからむドラマエピソードの素材として以外では、ほぼたきなにガン無視されていて切なかったですね。概ね、このDAというのは、一期においては世界観の特殊性と、さらにそこからはみ出した千束とたきなを魅力的なものにみせるための、当て馬として機能していました。

興味深いのは──多くのリコリスが劇中の事件で殺されているということです。

それを直接描写しなかったのは同アニメパッケージとしては賢明ですが、ガンスリンガーガールではむしろそういう鬱場面にこそドラマがある創りとなっていたので、全編通して結局一度も鬱展開を出すことなく明るく終わったリコリコは、ちょっと衝撃的でしたね。

続いて、DAと喫茶リコリコの敵対者についてのお話。

千束の持つ大切なものに対比する真島

リコリス一期において、味方側のライバルとして設定されたのがDAであるならば、陰謀渦巻くミステリを抱えた敵としてのポジションが与えられたのが、真島のグループです。

で、このグループ特に名前がないんですよね。

そもそもの行動動機もよくわからない。

最終話において真島によって動機が語られていますが、その動機であれだけの人がついてくるのか?
というのはちょっと疑問があります。

──それはそれとして、こちらの真島側の組織も、同じくちさたきの、能力と魅力を引き出す当て馬でした。

彼らの物語上の役割は「事件を起こす」こと。そのために、真島だけではたりないので、万能なサポーターとしてロボ太も設定されていました。そして、真島の口からは、社会に対する疑念が語られる構成になっていて、これが千束の素朴な願いと衝突することで、劇中において何が大事であるかを問いかける構造になっていました。

あんまりテーマ的なものは強く打ち出していない作品ですが、一期が終わってみれば、千束の行動動機は「好きなものを守る」というのが一貫していることがわかりましたが、真島というキャラクターはその千束の信念の対比となるように設定されていました。

これは、次回作に引き継がれる形で、広がりをつくっていくのだろうと予想されます。

その他真島グループメンバーについては、ロボ太はいましたが、他はすべてモブです。

真島グループは省エネ設定の「事件起こし役」であり、かつ「千束の願いと表裏」になる存在として設定されただけのグループでした。

すべてはちさたきのための省エネ設計

他の記事でも言及していますが、ここまで紹介した主要グループ2つは概ね、千束及びたきなの、ドラマを生み出すための障害となるように作られたグループです。

それは省エネ設計で、ほんとうに必要最低限のキャラしかいないのが興味深いですね。これはオリジナルアニメだからかもしれません。

小説やコミックとかだと作家さんは膨大な時間をかけられるので、言及できる範囲のキャラクターに設定をつけたりするんですよ。

たとえばメイドインアビスでは、成れはて村の住人の全ての設定を作ったと作者が言明していました。一方リコリコは、ちさたきのストーリーラインの引き立て要素&整合性をとるためのものとして、本当に最低限の設定しか用意していません。

あるいは無関係のキャラ描写に時間を書けませんでした。

だからこその設定が軽い印象もありますが、その分ちさたきに魅力を全振りして、押し切るような作劇&キャラ作成方法になっているのです。

その力技は喫茶リコリコのメンバーにも如実に現れていました。

喫茶リコリコのいびつなキャラ配置

同作の物語の中心となった喫茶リコリコは、たきなとクルミ加入以前は、中原ミズキとミカと千束の三人で、不殺の裏稼業を行うDAの外注組織でした。

しかし、たきなが加入し、真島ら敵対者が発生すると、メンバーが足りなくなります。ミカはバックアッパーとして優秀ですが、現場人間であり、ミズキはやる気がない。

第一話で千束がDAのサポートに間に合わなかったとおり、組織として強烈に不完全なのが面白いですね。

そこにたきなが加わったことで、さらなる現場型で指揮者のいないフロントヘビーな組織となる。
クルミが加入しないと、喫茶リコリコには全体を俯瞰でみれるメンバーがいないのですよね。

劇中でも物語展開においても最強のクルミ

そこに、ウォールナット=クルミというキャラクターを入れたのは、わかりやすい構図でした。
このクルミという存在、真島側でいうとロボ太というのは本当に便利です。

これらのハッカーは、真島とちさたきが活躍する舞台を整えるための、裏の作業を全部やってくれるんですよ。

さらに、ありえない展開もハッカーの能力で実現してしまうのです。

つまり、ちさたき及び真島以外の劇中における最重要人物は、クルミでありロボ太だったりするんですけど、これは狙ってそうなったというよりは、作劇上の必然でした。

お話をすすめる時に、とんでもなく便利だから双方の勢力に、ハッカーキャラを入れたんですよ。
一方で、それによってリコリコでは駄目なキャラと謎なキャラが発生します。

嘆くばかりで何もしないミカ

ミカというキャラクターは千束の発端に関わった存在であり、千束を育てたキャラクターでもありますが、最終話以外ではほんとうに、乙女チックに嘆くばかりでダメダメな大人にしかみえませんでした。

ストーリー展開を見ていると、千束があんなに苦しむ前に、吉松に対して何か出来ることがあったんじゃないかとも思えますよね。

しかし、同作では千束とたきなが自ら、未来を勝ち取るスタイルでしたから、ミカにはそんな役割が与えられなかった。

ミカは最後にその能力の一旦をみせて、重要な仕事を行って面目を保ったわけですが、ちょっともったいなかったですね。

リコリコ一番のへんなキャラとその理由

そして、リコリスリコイルにおける一番の謎キャラ──それは、中原ミズキ姉さんです。

彼女って存在しなくてもわりと物語が成立するんですよね。いちおう劇中では、乗り物の運転役や運搬役を請け負っていますが、際立って奇妙なのが、飲んだくれの恋愛脳以外のキャラ付が全くなされていないことです。

普通、妙齢の女子ですから、千束の良きアドバイザーになったりすることもできるわけですが、劇中においてそういう役割はほぼ放棄しています。

コメディーリリーフではありますが、狂言回しではない。

おそらく立て付けとしては、喫茶リコリコ家業の雑務役として設定されたのでしょうけど、主要なストーリー展開には一切介入しない。

なんて奇妙なキャラなのでしょう?

なぜそんなキャラになったのか?

そこには、製作者のキャラ設定についてのある意図が絡んでいます。

この物語は、ちさたきの物語です。だからそれ以外が全部邪魔なのです。だから、ちさたき以外でドラマが発生しそうなキャラ付けやキャラエピソードというのは徹底的に排除されているんですね。

その昔、北野武が撮ったハナビという映画があるんですが、劇中に岸本加世子という大女優が扮する、主人公刑事の妻役が出てきます。

このとき、女優は監督の北野武に「どんな演技をすればいいか聞いたところ」北野武は「積極的な演技をしなくていい」というようなことを言ったといいます。

理由は、夫婦間に男女の性的な雰囲気を発生させたくなかったらしいのですが、これはようするに、その劇中のキャラクターになにかをさせると、キャラに意味が生じて、お話が変わってしまうから、というのがあるんですね。

この中原ミズキというのも、喫茶リコリコの中で、何らかの意思や思想をもって行動をしてしまうと、ちさたきのピュアな物語に影響がでてしまうのです。

だから、徹底的に意味不明なキャラクターに作られていたのです。これはミカが最後まで活躍の機会がなかった理由にも通じます。中原ミズキ姉さんは、元DAですから、おそらく掘り下げていけばいろいろな考えを持っていてもおかしくないんですが、そうはならなかったのが興味深いですね。

短期決戦のリコリスリコイルという作品において、無駄なものをそぎおとしてキャラ配置した結果、謎な姉さんが生まれた──

そういうキャラクターが中原ミズキなんですね。

以上のとおり、リコリスリコイルは、キャラクターの設定や役割が、ほんとうに削りに削られて作られたものとなっています。

それらは時にいびつなものとなっています。

ですが、だからこそちさたきの活躍が際立ったともいえます。

ただ、視聴者としては周辺キャラの掘り下げに物足りなさもあり、二期やスピンオフでは伸びやかに活躍するほかのキャラクターもちょっと見てみたいな、などと思うのです。

たとえば──「中原ミズキ姉さんは、いかにしてDAを辞め、堕落して逆たまを求める恋愛脳女子に至ったのか?」とかね。

千束が望むものはささやかな日常ですが、中原ミズキが望む安寧は逆タマなんですよ。姉さん欲望にストレートすぎて最高に好きです。というか、そんなみずき姉さんのダメ人間ガンアクションコメディーもちょっと見てみたいのです。

以上、キャラの役割とその意味についてのお話でした。

動画版

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