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スパイ×ファミリーは、ご都合主義で作られた素晴らしき現代ファンタジーです

SPY×FAMILY

スパイ×ファミリーの評判が良く面白いのはわかりきった話ですが──お気に入りの漫画なので、改めて「良作だよなぁ」と思いつつ、いまさらながらの雑感と作品紹介。

(C)遠藤達哉/集英社

スパイ×ファミリーの設定とあらすじ

詳細は、他サイトのほうが詳しいものが多いでしょうが、一応、大まかな説明を書きます。

SPY×FAMILYは少年ジャンプ+で連載中の漫画。作者は遠藤達也さんで、現在は隔週月曜更新で連載中。

お話としては──

スパイの男、殺し屋の女、そして超能力者の少女が、それぞれの目的のために素性を隠して「偽の家族」を築き、家族として日常を送るが、キャラクターの濃さ故に予想外のトラブルが日々巻き起こってしまう、ハートフルホームコメディになっています。

設定世界は、東西間に鉄のカーテンが降りた、ドイツのような架空の西洋の街です。西側から東側に忍び込んだ凄腕スパイの「黄昏」ことロイド・フォージャーは、とある政治家と接触するために、偽装家族を作り、名門校に養子を入学させる任務を請け負いました。

その目的のために、ロイドは孤児院に暮らす超能力者の少女アーニャを引き取る。しかし、入学面接時に妻が必要であったことから、急遽、同じように偽装結婚を求めていた「いばら姫」のコードネームで活動をしていた殺し屋のヨル・ブライアと形式上の夫婦となった。

ヨルとロイドは互いに本当の仕事や能力は隠したまま、疑似家族となるが、アーニャは超能力で読心術が使えることから、ロイドとヨルの素性を知っています。しかしアーニャは安住の地となる家族をもとめていたことから、それを隠しつつ、フォローなどもしつつ、即席の疑似家族として、3人は、ドタバタとした生活をする。

そんなお話です。

主役キャラクター

主要なキャラクターは3+1匹ですね。

“黄昏” ロイド・フォージャー

本作の主人公で、黄昏のコードネームを持つ凄腕のスパイ。細かいプロフィールはふせられている、あらゆる能力に優れたスーパースパイ。任務のために、ヨルやアーニャと疑似家族を作り、振り回されつつも任務と家族の生活をこなす苦労人。

(C)遠藤達哉/集英社

“いばら姫” ヨル・フォージャー

普段は市役所で働くが、裏では「いばら姫」の名で殺し屋業を営む女性。27歳。殺し屋としての身体能力はロイドを上回る。掃除は得意だが、それ以外の家事は苦手。

(C)遠藤達哉/集英社

“被検体007” アーニャ・フォージャー

他人の心が読める超能力者の少女。ある組織の実験に嫌気がさして逃げ出し、施設を転々としていたが、ロイドに興味を懐き養女となる。

(C)遠藤達哉/集英社

ボンド・フォージャー

未来予知能力を持つ、元実験動物だった犬。しかし、その力はアーニャしか知らない。

他にも魅力的なキャラがいっぱいいますが、細かい設定や、登場キャラクターは別サイトを御覧ください。

スパイ×ファミリーの何がおもしろいの?

スパイ×ファミリーは、1950年代〜70年代くらいまでに流行ったスパイ映画を源流にして「Mr.&Mrs. スミス」や「インクレディブル」的なハリウッドアクションコメディを取り込み、さらに日本のコミック的なアレンジが成された、愉快痛快、かつ心温まる漫画になっています。

設定だけを見ると、殺伐とした陰謀物になりがちですが、シリアスには振らずに、スパイや殺し屋を浪漫あるものとして描き、アーニャという少女を介することで、絶妙なバランスでもって、ハートフルなお話に仕上げています。

ポイントはスパイや殺し屋という荒唐無稽な設定をスーパーな能力として設定した上で、その無敵の力を隠しつつ、全力でホームドラマを演じなければいけないという状況に追い込んでいるところにあります。

これらは、事情を知りながらも、ずっと家族でいたいアーニャの読心術によって絶妙にフォローされることで、さらに可笑しみが増したものになります。加えて、時折差し込まれる「家族」としての心温まるエピソードは、感動を膨らませてくれるものになっています。

(C)遠藤達哉/集英社

丁寧な作画が生み出す世界観に加えて、この絶妙なシリアスとコメディのバランスが、この漫画をとんでもなく面白いお話にしています。

SPY×FAMILYを見ていて思う

もう少し細かい話をします。

SPY×FAMILYという作品は、設定の整合性という点でいうと、かなりファンタジー要素の強い物語になっています。

例えば、昨今のヒット作である進撃や呪術廻戦、あるいは鬼滅の刃というのは、ジョジョやハンターハンターに似た、設定の整合性の取れた物語になっていますよね。戦いには理屈や対処法があり、その仕組も理解することで楽しめるのが、昨今の人気漫画の特徴でもあります。

ところが、このSPY×FAMILYという作品は、スパイの能力も殺し屋の能力も、ほんとうに荒唐無稽なものになっています。個々人の能力については、ほぼファンタジーです。なぜそうなっているのか、といった説明はほとんどされないんです。更に言うと、展開もご都合主義バリバリですすみます。

本当に、だれも不幸にならないように、都合よく話が進みます。

SPY×FAMILYは「ご都合主義で作られた現代ファンタジー」なんです。でも面白い。

(C)遠藤達哉/集英社

ここまで今っぽい世界で緻密に書かれた作品でありながら、ご都合主義を恐れない描き方をした作品というのは、ちょっとめずらしいな、と思っています。

こういう作品は、画力や漫画を面白く見せる力がなかったら、たぶん子供だましのチープな物語にしかならないと思うんですよね。ところが、SPY×FAMILYは、アクションとしても、ホームドラマとしても、本当に質が高い。そしてその質の高さで、読者を騙し切る力がある物語になっているんです。

理屈に疲れた人に癒やしをもたらす娯楽

なぜ「ご都合主義で作られた現代ファンタジー」が、令和のこの時代にウケるのか?

キャラがいいとか設定がいいとか、作者の才能があふれているとか、色々あると思うんですけど、私が個人的に思うのは、昨今の世にあふれる「理屈」への反動ですよね。

今の時代って、情報化社会として世の中が発達したこともあって、何についても理屈があって、世界の全ても解説しつくさんばかりの勢いがあるじゃないですか?

日々生活しながら、そういうものを追いかけるのってかなり疲れるんですよね。お金儲けのための仕組みを作るとか、効率の良い勉強を追い求めるとか、どのライフハックを駆使すればQOLが上がるとか、世の中そんな話ばっかりです。

何も考えずに、爽快で、かつシンプルにキュンとなれるお話はないのか、と。

そういう時に、このSPY×FAMILYというのは、世の人の大体が何となく知っている「スパイ」そして「殺し屋」さらに「超能力者」を置いて、それらの能力は雑に描きつつ、癒やしのホームドラマの方を重点的に描いてみせた。

(C)遠藤達哉/集英社

そこが、みんなが心惹かれた理由だと思うんですよね。

ちなみに、昨今のご都合主義系で似たものでいうと「異世界ファンタジー」というのは一つあるんですけど、あっちはほとんどが男性向けなんですよね。それから、ネタに走った一発モノや、ご都合主義の癒やし作品もあるっちゃありますが、ここまで細かく緻密に作られた、娯楽作品というのは少ない。

一方で、SPY×FAMILYは、男性向けでも、一発ネタでもない。女性も大人も子供も理屈なしで素直に楽しめる「ハリウッド映画的なターゲットの幅広さ」と「奥深さ」がある作品なんですよね。

娯楽ってこういう事ですよね

SPY×FAMILYを見ていて思う音は、娯楽ってこういう事だよなぁ、ということです。

いつか終わるかもしれないけど、少なくとも今は終わらない、そんな安心感とともに幅広い範囲の娯楽を提供していることは、一つ特別な価値です。

浪漫とご都合主義で作られた、盛りだくさん終わりのない娯楽、それがSPY×FAMILYという作品なんだと思うのです。

そんな感じで、今更ながらもSPY×FAMILY、強烈におすすめしておきます。はやくアニメ化しないかなー。

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