ダイナゼノン前半雑感〜やっぱりこのシリーズは少年少女のキャラ心象が細かく描かれていておもしろい

SSSS.DYNAZENON
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あんまり話題にならないSSSS.DYNAZENONですが、やっぱりグリットマン系のこのシリーズは、個人的にはとってもおもしろいと思っています(つまらないという人もいるのでしょうか?)。

今回はそれについての感想と雑感です。考察よりもキャラデザインと演出の解説を主にして、wikiにものっていないことを好き勝手につらつらと。※前作ネタバレちょこっとあり。

ダイナゼノンとグリットマンと長谷川圭一という脚本家

ダイナゼノンは、円谷特撮の電光超人グリットマン、そしてアニメのSSSS.GRIDMANのシリーズの一つで、現時点での最新版のアニメ作品ですね。

特徴としては、玩具セールスを見越した、巨大ヒーローや怪獣、そして合体メカが登場する、円谷お得意の古式ゆかしい巨大ヒーローモノです。

で、SSSSシリーズというのは、新時代におけるヒーローモノを目指して昨今シリーズ化制作されている作品群です。

前作のSSSSグリットマンは、キャラクターの(主に上半身担当と下半身担当)魅力もあって、静かな人気を博していました。個人的には、前作の作品は、キャラクターの良さもそうですが、シナリオ上のキャラのセリフが本当に上手いなーと思っていました。

脚本が長谷川圭一さんという方なんですが、この方はもともと、実写の平成ウルトラシリーズを手掛けている脚本家で、ようするにウデがいい。うまい。ほんとうに上手い。

実写経験のある脚本家が作るリアルなセリフのやりとり

実写の脚本家というのは、書き方にある特徴があります。実写作品というのは、アニメーション以上に絵で演出を補完します。ですので、劇中のセリフは上手い人だと最小限になります。

対して、アニメというのは作劇上の「絵」に限界があることから、それを補完するために説明セリフというのがしばしば出てきます。

設定が細かい上に、世界観をガラッとひっくり返しちゃったエヴァのQなんかは特に顕著だったと思うんですけど、アニメ発の脚本というのは、顔や所作で感情や情報を伝えることに限界があることから、どうしても、会話で情報を伝えるんですよね。エヴァQはなにかにつけてベラベラしゃべって解説していました(それがエヴァらしさでもありますけど)。

それに対して、実写において説明セリフというのは、逆に演出の邪魔になるんです。絵で説明したほうが時間もカットできるし情報伝達もスムーズになる。とくに実写においては、人の細かな感情はアニメと違って、表情や所作を撮ることで大いに補える。

で、この長谷川圭一という脚本家さんも実写発の脚本家さんですから、アニメでありながら、非常に最小限のうまいセリフで、キャラの振る舞いや情緒を描いて見せている。それがこのアニメのグリットマンシリーズには本当によく現れている。

もちろん、実写に近い演出をやってのける、監督の雨宮哲さんや作画=TRIGGERの方々のセリフに頼らない絵作りがうまい、というのもありますが、ちょっと昨今のベラベラ解説しながら物語を進めるアニメ作品の中では異質です。

で、それが、とっても心地よいという。

「少年少女の喜怒哀楽のリアル」を描くことに成功している

その「最小限の説明しかしないセリフ」というのは、キャラとキャラとの間にあるディスコミュニケーション(すれ違い)において発揮されます。

日常のリアルなコミュニケーションというのは「誤解」の積み重ねであり、「言いたくても言わない」という状況の繰り返しです。

例えば、ルフィは「海賊王に俺はなる!」とか言っちゃうんです。悟空は「オラわくわくすっぞ!」とか言っちゃうんです。でもこのSSSSシリーズのドラマパートにおける少年少女たちは「したい」も「ほしい」も「痛い」も「悲しい」も「嬉しい」も直接言葉にして言わないんです。

その代わり日常のやり取りの中で、全く関係ない他愛もないセリフまじえつつ「楽しげに」あるいは「悲しげに」あるいは「怒りながら」動いて回ることで、感情や情報を伝えます。この抑えたセリフまわしは、表情や所作に情報を頼ることが出来る実写ならではの演出方法から来ているものなんです。

そしてSSSSシリーズが、そんなセリフまわしと演出方法を選んだ結果、劇中に登場するキャラクターの、なんとまあやりとりの生々しいこと

ダイナゼノンにおけるガウマは、わりとわかりやすいヒーローのテンプレで書かれていますが、それ以外の、主人公よもぎ、ヒロイン夢芽、暦、ちせ、その他の周辺キャラクターたちは、言語化出来ない思いを、ちぐはぐなやり取りのセリフの中にこめて、なまなましく表現しています。

例えば、ヒロインの南 夢芽などは久々に登場したダウナー系のヒロインですが、これが例えば綾波とかなら、アニメアニメしすぎた寡黙系萌美少女キャラにしかならないんですけど、ダイナゼノンにおいては、自分のことでいっぱいいっぱいなリアルJKとして描かれている。こういうキャデザインって、アニメだと本当に難しいと思うんですけど、今作では今の所やりきってますよね。

また今作のキャラデザインも、蓋を開けてみれば好ましいところがあります。前作グリットマンにおける、アカネと六花は、リアリティを付与しながらも、萌え美少女路線をとっていましたが、今作では、上半身担当と下半身担当が大人キャラのムジナや、2代目ちゃんことアノシラスに割り振られている。少年少女たちはボンキュッボンではない。たぶん少年少女の、未成熟であるというリアリティを追求した結果、あざと過ぎないキャラデザインになったんだろうと思うのです。

それらの配慮は、始め「芋いキャラデザかなー?」 と思ったんですが、今では、かなり成功しているように思えます。

特撮アクションに並行してボーイミーツガールの情緒を描く良作

さらにさらに好ましいのは、前作と違って、男女カプが豊富なことです。

よもぎは夢芽と、ガウマはまだ見ぬ女性と、暦はちせ?あるいはムジナと? それぞれ収まりの良い組み合わせがあって、その周辺で一喜一憂しています。

怪獣とロボと巨大ヒーローは、玩具セールス的にはメインですが、ドラマ的にはおまけ扱いになっていますよね。

そして、かつてのウルトラマンシリーズや、ウルトラセブンが、子供向けでありながら、時に大人も唸らせるドラマをぶっこんできたことを考えると、同シリーズにおいてしっかりとした少年少女ドラマが描かれるのは、まったくもって当然の流れだと思えます。

前作は、世界の神であるアカネと、六花の物語でした。

今作は、誰の物語なのでしょうか?

たぶん、出てくる男女全てに物語がありそうです。

ガウマが、よもぎが、夢芽が、暦がちせが、今後自身のあやふやなあり方をどう未来につなげてゆくのか? なにげにドラマパートがとっても楽しみな作品なのです。

そういう作品がSSSS.DYNAZENONなのです。なもんで、推しときますね。

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