今回は、小林さんちのメイドラゴンがなぜ魅力的なのか解説したいと思います。
小林さん家のメイドラゴンはなぜ人気なのでしょうか?
メイドラゴン人気の理由って
人気というのは、簡単にいってしまえば、男女問わず多数のファンを獲得しているからですね。そして、メイドラゴンは幅広い層に好まれています。
メイドラゴンは日常系の物語です。主人公の小林さんやトールたちドラゴンのささやかな生活が描かれるのが特徴です。キャラの可愛さ、日常系の口当たりの良さは、人気のポイントですよね。
しかし、それだけではなさそうです。
もうすこし踏み込んでみましょう。小林さんは、正直なことを言ってしまうと、一般的には喪女や喪男に分類されるキャラクターですね。そして仕事はうまくいっていても、どうしてもパートナーに恵まれない人物が、ペットを飼うのは良くある話です。
小林さんは、そのやさしさでもって、ドラゴンをネコのごとくひろってきて、同居人を増やしているってことです。
つまりはメイドラゴンとは、実は「喪女のドラゴン多頭飼育物語」ってことですよね。
こういってしまうと語弊がありそうですが、これらのシチュエーションにこそ、物語の人気の秘密があると、僕は思っています。
小林さん、というキャラクター
話を少し戻しましょう。
メイドラゴンというのは、生活物語であり日常物語ですが、同性を中心とした物語になっていますよね。そして、小林さん家のキャラクターたちは、とても可愛らしいですが、必ずしも男性をターゲットにしたデザインというわけではありません。空気感はほんわかしていて、ユニセックスです。また古い恋愛観の押し付けもありません。
そして、むしろ設定でいえば、恋愛関係や信頼関係の築き方については、極めて多様なスタイルを示しています。
小林さんというキャラクターは、パートナーにこそ現時点で恵まれていませんが、それ以外は地味なようで強いキャラクターです。彼女は、仕事ができ、優しさがあり、倫理観と慈愛を持っている。ドラゴンを諭す力もある。
ただし、ドラゴンを多頭飼育してしまう、喪女なんです。
実はこういうキャラクターって、過去にあんまり見かけたことありませんよね。
普通に考えると、メイドラゴンなどという、属性マシマシのキャラクターがヒロインであるならば、相手は男子であることの方が多いと思うんですよ。
ところがメイドラゴンの主人公小林さんは、そうではない。
なぜこんなキャラクターを主人公に据えたのか? なぜその上で人気が出たのか?
これは、シンプルに行ってしまえば、世の中には、旧来の価値観には収まらない生活をしている人たちが増えたから、ということだと思うんです。
極端な話をしましょう。もしサザエさん新聞掲載当時、大家族ではなく、独身のサザエさんと複数のタマ他猫たちの、生活物語だったら、スタンダードな作品になっていたでしょうか?
おそらく、当時の価値観で言えば、そんな「ニッチ」なシチュエーションの4コマ漫画は、選んですら貰えなかったでしょう。
つまりは、一昔前であれば、認められなかったライフスタイルが、今は一般回している。そしてメイドラゴンというのは、それらが自分たちに馴染みのものである、と感じさせることに成功した作品なのです。
小林さんのメイドラゴンは、旧来の古臭い価値観のワクの外で暮らすモジョモオトコめいた人達にも、いくらでも尊い有り様は存在するのだ、という証明してみせているんですよね。
だから、人気があるし、好感度も高いんです。
今を肯定しているから楽しい
え、モジョモジョうるさいって?
すいません。でも実際小林さんはそうです。それどころか劇中には、ちゃんと喪男もいたりするんです。
喪男は、滝谷さんっていうんですけど、彼は小林さんの類友とされています。もちろん作者は、滝谷さんを極端な喪男としてキャラ作成している訳ではないでしょう。ですが、少なくとも小林さんというパートナーのいない女子の対になる男性キャラとして、意図してい配置していますよね。
劇中においては、小林さんと滝谷さんの両方が、喪女と喪男の、ささやかながらも輝かしい愛と趣味に溢れた生活を肯定する存在なんです。
つまりは、小林さんちのメイドラゴンという物語は、かなり然りと「今」が反映されている物語だってことですね。だから、皆親しみを覚えるのでしょう。
以上、小林さんちのメイドラゴンの魅力や人気についての、ナナメ論評でした。
さて最後に、もう一つだけお話しをします。
メイドラゴンの第一期アニメを作ったのは、武本康弘さんという監督です。ご存知のかたもいらっしゃると思いますが、武本監督は京都アニメのあの事件によって、お亡くなりになっています。
監督が作った第一期のほんわかとしたメイドラゴンがなければ、この作品はこれほどまでの人気にはならなかったでしょう。素晴らしい作品をアニメ化し、素晴らしい物語として動かしてくれた、武本監督にに心からの感謝と、哀悼の意を表します。
本当にありがとうございました。また、引き続き、メイドラゴンを楽しみつつ関わる皆々様方を応援したいと思います。