波よ聞いてくれが面白い
TVアニメ「波よ聞いてくれ」が先ごろ最終回を迎えました。このアニメの原作はアフタヌーンのコミックで、原作者は無限の住人でおなじみの沙村広明先生。前作の殺伐とした血生臭〜い切った張ったのサムライモノとは打って変わって「波よ聞いてくれ」は、ポップでキュートで騒がしい女子が活躍するハートフルな現代モノになっています。無限の住人は、前に漫画喫茶だったかで読破したけれど、波よ聞いてくれはしばらく連載を追っていませんでした。その存在すら忘れていた私ですが、まさかこれがアニメ化されるとは思っても見ませんでした。。
いや、TVドラマとかならあるかなー、なんて思ってはいたんです。しかし、主人公のミナレを演じられる役者がいるかどうか難しいところ。別に時代に沿った作品ではないというのもあるし。
さて、そのアニメ化した同作品を見た感想は、一言で言えば大満足でした。
テンポの良いストーリー展開
このアニメの醍醐味は、主人公の女子ミナレの破天荒な奮闘を時に生暖かく、時に食い入るように見て楽しむ、そんなアニメなんですが──って良くわからないですよね。以下、簡単なあらすじです。
これだけ聞いてしまうとナンノコッチャと思うかも知れませんが、本当にそういう話になっています。で、ポイントは、そのストーリー展開が昨今めずらしい萌えでもキャラでもなく実写風で、しかもこれが非常にテンポが良い。もともとの原作が面白いというのもありますが、昨今TVドラマだってここまでテンポよく進むストーリーは無いでしょう、と思える。
テンポって何かって?
要するに、見ていて飽きない。次へ、次へと意識が進む。興味を惹きつけられて、気づいたら30分終わっているということです。
テンポの良い理由は2つ。ストーリーがちゃんと作り込まれていて、ネタフリに対してオチの回収がちゃんとされていて気持ちいい。そしてもう一つは、登場人物たちのキャラが立っていて、やりとりに筋が通っていて楽しい。ん? となることがないし、納得感もある。特に、主人公ミナレは全開で抜群に人物が立っていて、見ていて飽きない。
これでもかと繰り出される主人公ミナレのセリフ
このアニメは、ラジオを題材に扱っています。ラジオといえば、トークですよね。トークが全てといっても過言じゃない。だから、素人ながらにラジオを任される主人公はもちろんトークがおもしろくなければならないんですけど、ミナレという女子は、近年まれに見るマシンガントークを繰り出す、おしゃべり女子で、しかもそれが、男女ともに聞いていて楽しい。ノリよく、ツッコミよく、解説よく、社会批判よく、喜怒哀楽激しく、ぺちゃくちゃ喋りまくる。
実際、こういう女子もいなくはないけれど、よくぞここまで、というようなキャラクターの立ちっぷり。そして、ラジオ番組内でミナレが強いられるのは番組連動する形での、自身の妄想と内面の吐露であり、鬼畜なプロデューサーが、ミナレをうまく企画で誘導して、実生活の希望願望疑問をミナレにべらべらと喋らせる。
ミナレ本人は、それをよく思っていないけれど、彼女は喋ることでストレスを発散するのです。まんまとプロデューサーにハメられて、その突拍子もない思考回路で、物事に、自分に、世界に決着をつけてゆく。それがストーリーにもバチッと連動していて、とっても爽快感があるんです。このあたりは、アニメを見てくれ、としか言えませんが、近年まれに見るヒロインですね。
ていうか、このキャラを演じきった声優さん(杉山里穂さん ※鼓田ミナレと同じく北海道出身&主人公と同い年──性格は全くちがうっぽいけども)、本当に凄いと思う。
コメディのようでちょっと深いところも描いているドラマ
そして、作品は萌えアニメじゃありません。もちろん、萌担当のキャラクターもおりますが、実際に描かれるのはコメディタッチながらも、ミナレとその周辺の抱えるジレンマがあって、そのドラマ。それらの思惑がベースはコメディタッチに、時にシリアスに交錯して、ドラマをもり立てます。
ミナレ以外のキャラクターでいうと、ヒロイン(?)枠の南波瑞穂(なんば みずほ)、城華マキエ(たちばな マキエ)(っていうかマキエって無限の住人の最強キャラじゃん)がいじらしく可愛い。そして一方でいぶし銀の男ども、麻藤兼嗣(まとう かねつぐ)さんと久連木克三(くれこ かつみ)さん、このあたりはオッサンを描かせたら最強の沙村広明先生の真骨頂とも言える、奥深いキャラデザインしています。
昨今、学園モノやら異世界モノやらが目立つ時代にあって、たまにはこういうのもいいよな〜と思える、大人のドラマを描いています。というか、女子にはたまらないオジサマなんじゃないかな。
鼓田ミナレと周囲の行方
そんな彼女たち、彼らのドラマが全12話の中に綺麗にさっぱりと収まっており、視聴後の爽快感が清々しい。物語の要点は──変わりそうもないけど少しづつ変わる鼓田ミナレという主人公のその姿。そして、彼女を中心に変化をする登場人物たち。ようするにちょっとした群像ものになっているんです。
群像ものっていうのは、どう楽しむのかというとですね──推しキャラを見つけて、それに寄り添って楽しむんです。もちろん「波よ聞いてくれ」本編も面白いのですが、少しづつ明かされる周囲の人物の抱えるドラマもまた興味深くて、ああこれは2期も是非見てみたいな、と思えるアニメなのです。
私も、こっそり推しキャラがいますが、たぶん見た人は、自分のお気に入りのキャラがすぐに見つかって、きっと応援したくなったりすると思いますよ。
OPEDもおしゃれ感全開。昨今めずらしい、萌えを飛び越えたアニメ、Amazonで見られるので、よかったら見てみましょう。