リコリコ1期は尊いですね。ちさたきがてぇてぇですね。リコリコ考察は別でいくつかしていますが、いくつかは千束を中心に解説をしていました。
今回は千束以外のお話です。たきなの魅力の理由にざっくりふれつつ、千束とたきなの「尊いもの」を担保している、エグいまでの舞台設定の説明をしたいと思います。
リコリスが尊いだなんて、何アタリマエのこといっいるんだ、なんて思うかもしれません。そうなんですけど、そうなんですけど、細かく見ていくと本当に、尊いのための仕組みが徹底されているんです。
そのあたりを説明したいと思います。さて、早速やっていきましょう。
リコリコってどんな話だっけ?
まず最初に軽くおさらいです。
リコリコってどんな話でしょうか?
バディ物の美少女ガンアクション? まあそうなんですけど、細かくいうと、リコリコとは千束とたきなのガール・ミーツ・ガールの物語です。
作品上の立て付けで言うと、千束が主役でたきなが準主役になっていますが──役割的には、千束が謎多きヒロインで、たきなが千束に触れることで変化する主人公格を持っていて、かつ視聴者目線で千束を追いかけるポジションにいます。
で、作中ではこの関係において数多の尊いやり取りを創出するように作られています。
リコリコとは、本質的にそういうガール・ミーツ・ガールの尊い物語なのです。その前提で──まず、たきなの魅力と役割を細かく解説したいと思います。
たきなの魅力と影響
同サイトでは、別のリコリコ解説で、同作の魅力は千束が中心であり、千束がすべてだ、というようなことをいいました。
それは、たきな他のキャラクターに魅力がない、という話ではありません。
たきなには魅力が溢れています。
黒髪の美人で、気が強く、仕事ができ、冷静沈着。戦闘スキルもピカイチ。品格をもち、目上にも目下にも人当たりも良い。多少向こう見ずで突っ走るところがありますが、これは千束も同じ様なものです。
たきなは物語を通して千束や喫茶リコリコを大切に思うようになり、精一杯千束を助けようとします。その様子は尊いものがありますね。
しかし一方で、たきなというキャラクター自体は、フラットにみるとそこまで特別なキャラではないとも思っています。
クールで完璧主義者で感情の起伏に乏しく忠誠心が強い美少女というのは、いままでも他の作品にけっこういましたよね。たきなは過去に作られた数多の作品のキャラクターのテンプレの上にのっており、その行動は予測の範囲にあります。彼女だけで言ったらそんなに特別ではないのです。
ですが、同作においてたきなは、千束をパートナーとすることで魅力を発揮しはじめます。というか、たきなのようなクールキャラは──外部の刺激に対して変化をしてみせることで魅力を発揮する存在なのです。
たきなは、前半と後半で、自身の願いが変化します。
物語初期において、たきなは、自分の価値を高め評価してくれる場所を求めていました。それはもともとDAでした。たきなはそこに戻ろうとしていましたね。しかし、千束と通じることで、DAよりも喫茶リコリコや千束たちの方こそ尊いのではないかと考え始めます。さらに千束の秘密を知った後では、千束を助け、在りし日を取り戻すことが自分の価値につながるのではないか、と思い始めます。
このたきなの「欲しい物」の変化は、たきなの感情を動かし、行動させ、たきなを魅力的なものに変えるのです。
付帯して、もう一つ、たきなの魅力につながる性質──細かくは属性があります。
同別解説で、たきなは千束を観察する視聴者目線を請け負うキャラクターだと言いました。
千束はかわいい存在ですが、前編通してミステリを持っており、エキセントリックすぎて、共感の対象ではありません。一方、たきなはそんな千束に対して一喜一憂するようになり、それは視聴者の共感を引き出します。
じゃんけんに勝ちたいという想いと、勝ったという喜び。千束が心配という感情とその行動。千束の心臓の音を聞きたいと思う感情。千束ためにDAに戻ろうとする衝動──たきなの全ての行動と気持ちはわかりやすいものです。たきなは視聴者の「そうだよね」を引き出しやすいキャラになっているのです。
つまりたきなとは、リアクションによる反応、視聴者目線に立った共感性の高いポジション、この2つによってキャラ属性を引き立てているというわけですね。
さらにいうと、その魅力は千束にフィードバックされるものでもあります。
ちさとは打てば響くキャラクターです。その反応のほぼ全ては、千束にとって時に意外性のあるものとして返ってきます。変化するたきなによって千束もまた影響を受けるのです。
視聴者はそんな尊いやりとりを全編とおして見てきた──というか見せつけられてきたのですね。
この「ちさたきてぇてぇスパイラル」は素晴らしいものがありますね。
そしてここからが──実は、今回のお話の本番です。
──実はリコリコの一期というのは、全てのエピソードやキャラ配置、設定が、ちさたきの関係のためだけに存在いているといっても過言ではない構造になっているのです。
ちさたきを尊いものとする構造
リコリコというのはテーマとかメッセージとかいったものはあまりありません。その代わり、ただただ徹底的に千束とたきなの関係、二人の女子どうしの絆の変化を表現するために、注力された物語になっています。
以下、ストーリーをちょっと分解して解説していきます。
改めて、そもそもの大まかなストーリーラインをここで改めて整理します。
それは次の通りです。
「あるところに、千束という天真爛漫な少女がいました。そこにたきなという堅物な少女が現れます。たきなは無理やり千束の友達させられてしまいます。はじめ、真面目なたきなは千束を胡散臭く思っていましたが、千束と付き合うなかで、たきなは千束の中に特別な価値を見出します。たきなはそれが大切なものだと気づき、自分の考え方を変えて、千束を守ろうとする」──そんなお話です。
ガンアクションとかアラン機関とか、真島とか、吉さんとかいろいろ設定あるんですが、ちさたきだけを抜きだすと以上のようなメインストーリーがあります。
これに付随して傍流には3つの大まかなストーリーラインがあります。
- たきなとDA、フキ他メンバーとの確執や成長を描くストーリーライン
- 波塔事件にかかわる真島と千束の因縁&ウォールナットとロボ太のストーリーライン
- 千束と吉松&ミカ、アラン機関の関係の謎を追いかけるストーリーライン
で、それぞれのストーリーラインの役割はこんな感じです
まず、たきなとDAの因縁ストーリーラインは、物語の背景にあるDAという組織の説明のために存在します。それから、こちらのストーリーラインでは、たきなのDA脱退理由と、たきなの自立と成長になるエピソードがあります。フキも含め、概ねたきなのミッションであり障害となるもので構成されています。
続いて電波塔がらみ真島と千束、そしてクルミとロボ太のストーリーライン。クルミおよびロボ太についてはそれぞれの勢力への参加理由の創出しています。クルミとロボ太は各陣営でお話を進めるために必須の存在です。クルミとロボ太はワイルドカードなんです。物語を強引にすすめるための舞台を整えようとした時、ハッキングができると非常にやりやすいんですね。現代っぽい舞台でありえないことをするためにはなおさらです。作劇上、使い勝手が良いのでロボ太とクルミが投入されている背景があります。さらに、こちらのストーリーラインでは、付帯して電波塔からの真島と千束の因縁、真島の大枠の説明。アラン機関の陰謀の説明等があります。これらは、千束の行動の障害となるものですね。
そして、三番目が、吉松&ミカとアラン機関のストーリーライン。これは千束とアラン機関に関連したミステリの話ですね。劇中視聴者をずっとひきつけてきた、舞台背景と千束の行動動機の解明についてのお話。また千束という存在の発端の説明。謎は解明されるにつれ、吉松が千束の障害となるように作られています。
これら3つを、先程あげた本編のガール・ミーツ・ガールのストーリーラインに織り込んで追いかけるのがリコリコの物語です。
これらはすべて、千束とたきなの願望を邪魔するエピソードになっています。全てのエピソードやキャラ配置は、シンプルにちさたき関係を阻害するためだけに用意されている。
リコリコの中身は、すべてはちさたきに集約しているんです。ガンアクションも、アラン機関も、DAも何もかもオマケなんです。
徹底しているな、と思うのはたとえば女子の友情を一番に邪魔をしてしまう”あるもの”までも、はじめっから完全に排除されていることです。
リコリコは徹底して○○を排除している
リコリコが徹底して排除しているもの。それはなにかというと──男子ですね。
言われてみれば当たり前なんですが、同作には、表立って千束とたきなの絆や友情に割って入る男子というのが出てきません。
吉松や真島がいるじゃないかって?
ちょっと良く見てください。まず吉松ですが──というか、保護者のミカと吉松は、どうみてもLGBT系のカップルにされています。そして千束の吉松へのあこがれは、男性を見るものとは違うものとして描かれる工夫ながされています。またミカと吉松側も、性対象としてちさたきを見ないようにつくられています。絶妙に濁している。
そして真島はちさたきに相対できる唯一の存在ですが、立場は千束と同じギフテッドの強キャラです。また彼の理想は金や権力ではなく開放です。彼は理想に生きるサイコパスな潔癖キャラです。情動で迷う男性とは別のなにかです。というかたぶん性欲ないでしょ真島。
ここでいう男子というのは、ちさたきに対して双方向で恋愛対象となりうる男子ということです。
普通の高校生といえば、アイドルでもなんでもいいんですけど、恋愛対象としての男子の話が出てきたっておかしく無いわけです。千束については、いちおうそれっぽい乙女描写が一瞬ありましたが、基本的には男子の気配は徹底的に消されています。
また女子を腕力で蹂躙するような力を持った男性キャラクターというのも置いていないし、そういうピンチもありません。申し訳程度に敵対勢力のモブとして腕っぷしの強そうな男性はでてきますが、圧倒的な戦闘能力をもつ千束とたきなにとっては、石ころのような存在として描かれているんですよね。
同作は、製作者側の意図として、ちさたき以外の双方向カップリングの可能性を、可能な限り排除しているのです。ちさたきてぇてぇのために、ここまでやるのか、とちょっと驚きましたね。
ちさたきのために作られた世界
つまりリコリスリコイルというのは、徹底的に二人の関係と絆、その変遷を追いかけるドラマ創出のために、ちさたき専用につくられ世界だってことです。
それは引いてみるとちょっと偏執的ではありますが、一方でだからこそ、視聴者はちさたきを徹底してピュアに楽しむことができたのだとも思うのです。個人的には、いままでのフィクションで散々こすり尽くしたテーマとかメッセージとか入れずに、てぇてぇに振り切って作ってくれてよかったな、などと思っています。
おそらくリコリスリコイルは、シリーズ化されたら、それらのなかでも燦然と輝く無二のてぇてぇ作品になると思います。同じことをやられても、二番煎じで慣れてしまうし、そもそもちさたきのようなバディはもう二度とつくられないんじゃないかなー。そんな奇跡の作品がリコリコだと思うのです。
とにかく、ファンとしてはちさたきを今後もスルメのように噛み締めたいところですね。
以上、リコリスリコイルの解説でした。