ウマ娘プリティーダービー、面白いですね。
初期はかなりハマって日がな育成行っていましたが、現在はFGOと同じくルーチンが出来上がり一日あたりの育成は1〜2回に落ち着きました。さて、それは置いておいて──
昨今の日本のソシャゲ界隈には、日本特有のジャンルというのがやっぱりあると思うんですよね。そしてウマ娘も、その「あるジャンル」における、特徴をうまくゲームと人気に取り込んだ作品だと思うのです。
今回はそのあたりについてお話したいと思います。
なぜウマ娘が人気なのか? その見方は?
ウマ娘が人気の理由──それは、過去記事にも書いたとおり、要点としては「少女たちによる圧巻の競馬シーンの再現」そして「中毒性のある育成ゲーム」にある、と以前記載しましたが、その記事に一つ書いていないことがあります。
それは、昨今のソシャゲ界隈では見過ごすことの出来ない重要な要素です。
そのゲーム性以外の、とても重要な要因というのは──コンテンツが「史実のモノやコトをキャラクター化した商品である」ということ。
こういう話は言われるまでも無いと思うんですが、昨今のキャラクター商品やソシャゲを見ていると、本当にこの「史実ネタ」というのが強い。これとあわせてゲーム部分をキチッと作ってくれば、だいたいヒットするのではないだろうか、とすら思えます。
他のゲーム事例としては、化け物コンテンツが2つありますね。
一つは、みなさんおなじみの「FGO−フェイトグランドオーダー」です。
このゲームは、歴史上の偉人や事象を英霊という形でキャラクター化&サーヴァントとして使役することで、大きな人気ゲームになることに成功しました。
そのベースにあるのは、同人ソフト時代のFateですが、関わるクリエイターたちの先見性と才能が当時から垣間見えるものになっていましたよね。
そして、もう一つの史実モノの代表的なものと言えば、DMMで配信している「艦隊これくしょん」、いわゆる艦これですね。
この2つは近年まれに見るヒットを飛ばしました。それぞれ、同じように史実の人物、そして船舶をキャラクター化してゲームにすることで、人々を楽しませていました。
そして、ウマ娘というゲームは、同じく実在の馬をモチーフにして、作られたゲームです。過去の人気作とおなじ文脈の上にコンテンツを提供していることになりますよね。
これらのゲームは、ソシャゲ界隈で非常に強いコンテンツになっていますよね。
さて──そんな史実キャラゲーですが、なぜそんなに人気になるのでしょうか?
誰もが知っているキャラクターを借りることで間口を広げる
私が、史実キャラゲーを見ていてつくづく思うのは、艦これにしろ、FGOにしろ、ウマ娘にしろ、誰もが知っている史実のキャラクターをベースにすることで、非常に間口の広い、とっつきやすい入り口を作ることができているという所ですよね。
艦これなら、誰もが知る艦船があり、FGOなら歴史年表でみた、数多のキャラクターが登場するという。ウマ娘もしかりです。そういう題材を使うことで、人は親しみやとっつきやすさを感じているのです。
これが例えば他のゲームだとどうでしょうか?
また引き合いに出してしまって恐縮ですが、例えばニーアオートマタのソシャゲ「リインカーネーション」では、初期登場キャラクターというのはとっつきやすさの無いものになっています。しかし、あれも2BやA2といったキャラクターをガチャにしこむことで、どうにか親和性を作ろうとしていました。
こういう、過去みたことのある何かを入り口に置くことは、コンテンツにとって非常に大切なことなのです。
そして、その強みを最大限に生かしたのが、FGOであり艦これであり、ウマ娘でした。他にも、DMMなら御城プロジェクトや刀剣乱舞などもあります。また艦これならアズールレーンという後発のコンテンツもありました。このあたりの作品というのは本当に、鉄板で人気作へと上り詰めていますよね(もちろんそうでないものもありますが)。
ちなみに、史実キャラの優位性はその親しみやすさだけではありません。
史実キャラを使ったもう一つの優位性について
史実モチーフの作品で大きいのは、「史実に実際にあったヒト/モノ/コトをキャラクターにしている」ということですが、なぜただ史実のキャラを使うだけで、良質なコンテンツづくり繋がるのか?
一つは先に述べたとおりの親しみやすさですが、もう一つは「設定を考える&設定を説明する手間が大幅に減る」というのがあります。
実は、コンテンツづくりにおいて最も大変なのが、設定づくりです。特にフィクションのものについては、その複雑な設定を作るために、作家さんが大きな時間を割かなければいけません。
しかし、史実ものというのは、すでにもう膨大な設定があって、それをベースに、キャラ画像を作成したり、言動を作成したり、イベントを作成したりすることができるのです。
しかも、その設定の説明は、史実を知っている人であれば「あー、あれね!」とすぐ理解できるものになっています。全く見たことのないキャラを理解するには時間がかかりますが、史実キャラなら設定づくりも、設定のユーザーへの説明も大幅にカットできるんですね。
これはコンテンツづくりにおいて、大きなアドバンテージになります。
艦これであれば、艦娘ごとのデザインはその壊れ方も含めて史実を意識したものになっており、FGOは歴史上のキャラに加えてスキルや宝具で史実をなぞらえます。ウマ娘であれば、そのキャラクター特性やイベントでの行動に、史実のネタが仕込まれているような形になっています。
そして、これらは、名前だけしか知らないユーザーの好奇心を刺激し、また詳しいユーザーもコアユーザーとして取り込むことに繋がります。さらに、膨大な追加コンテンツや二次コンテンツを提供する機会までも生み出します。
この史実ネタを引用したコンテンツについて、艦これとFGOというゲームは一つずば抜けていますよね。
この2つは、膨大な情報をコンテンツ化することに成功します。
史実ネタ掘り下げや見方の難しさ
ただ、見ていて思うのは、ただ史実のネタをつかって何かを作ればいいというものでもないんですよね。
ヒットした史実ネタキャラクターコンテンツを作ったクリエイターたちは、歴史をコピーするのではなく、アレンジしつつ、オリジナリティも付与し、キャラクターを魅力的に作り変えることで、史実のネタを何倍にも膨らませて、ユーザーを楽しませていました。
これは、ただ史実ネタを転用するだけではない、知識とセンスが必要な難しいものだと思います。
例えば、同じ史実ネタを扱ったコンテンツでも、滑った作品というのはあるのです。史実の車をキャラクターした「車なごコレクション」というゲームがかつて存在していました。題材としては申し分ないのですが、愛の薄い質の低いキャラクター作成によって、まったく鳴かず飛ばずのコンテンツになってしまっていました。
車をキャラ化するというのは、方向性としては間違っていないと思うのです。しかし、安易にキャラ化すればいいというものではないんですよね。
成功した、艦これやFGO、そしてウマ娘を見ていると、そのジャンルやキャラクターに対しての知識がとても深いですよね。史実からの転用も非常にセンスがよくて優れています。
そういうところに、手を抜かないからこそ、ユーザーはコンテンツに惹かれて、虜になるのだと思います。
史実キャラコンテンツの行く末は?
さて──
史実キャラコンテンツというのは、実はまだ狩りつくされていないジャンルだと思います。
まだ、史実ネタでキャラ化されていないジャンルというのは数多くありますよね。それらをうまくコンテンツにすることで、一山当てるクリエイターやゲーム会社というのは、今しばらく出てくると思います。
それが一巡したらどうなるのか? もちろん、FGO的なネタは今世紀以降で作られることは、なかなか難しいかもしれません。ウマ娘も無二なものでしょう。ですがアズールレーンは艦これを盗んできましたよね。
けしからん、と思いますか?
実は、史実をコンテンツにする試みというのは、ソシャゲに限らず、人は昔からいろいろとやってきていますよね。
例えば司馬遼太郎の小説だってそうです。あれは歴史上の人物を使っていますが、けっこうフィクションが混じっていたりしますよね。アーサー王伝説も、元は口伝の英雄伝でしょう。あるいは、三国志演義だってそうです。
人はそうやって過去の歴史を転用して、少し違う作品を数多く作ってきました。そう考えると、新たな史実ネタを使った、また別のジャンルというものは大いに出てくると思うのです。
というか◯◯とか××とか、あのジャンルとかも史実キャラ物コンテンツにできるよなぁ、などと思ったり──
さてはて、次はどんな史実ネタのキャラクターコンテンツが出現するのでしょうかね?