ダイナゼノンが楽しい。
それもロボ描写というより、キャラ描写が良くて。今回はその中からヒロインについてのやや未整理な短い雑感。
前回記事でも書きましたが、このダイナゼノンの脚本家はキャラのセリフが本当に上手いんですよね。そして生々しい。
で、目に入るのがダウナー系ヒロインの南夢芽と蓬とのカップリング、さらに、そこから浮きあがってくる夢芽の姿です。
目を引くカップリング
この二人、そんなにあざといキャラデザではないので、ちょっとレギュラーとしてはパッと見た感じでは、キャラが薄いんですよね。
しかし、物語を見ていくと、逆にそれがぐっと自然さを引き出していると感じられます。
ダウナー系で日常の出来事にはあまり積極的ではない南夢芽は、一方で姉の死については、強い思いを抱いており、その落差がキャラクターの外見にも言動にもよく現れている。
対するは夢芽の事が気になってしょうがない蓬。彼はキャラデザインこそ怪獣めいた色使いですが、思春期特有のナイーブさと、女子に接する時のおっかなびっくりした感じがとても良く現れている。
夢芽はそんな蓬の、淡い気持ちに気づいているが、まだどう対象していいかわかっていない。たまにうっとおしいとも思っている。しかし、少なからず自身も好意懐き始めていることがヒシヒシと伝わってくる。
蓬は、自分がどこまで夢芽にのめりこんでいいかわかっていない。初恋はあっただろうけれど、ここまで具体的に女子と距離が近づいたのは初めてだと思える。そのビクビクしながら踏み込んでゆく様子が、とても自然で好ましい。
夢芽は夢芽で、今の自分にいっぱいいっぱいで、時に蓬をぞんざいにあつかってしまうが、蓬のおかげで少しずつ失われた感情を取り戻してい。時に衝動的にアクティブに動いててみたりもする。
そんな姿に心惹かれる蓬という構図。
この二人は──昔の、恋愛物のテンプレのようなガツガツしたような関係の築き方じゃないのが、すごく好ましい。
こまかなすれ違いと、そのすれ違いからの回復がいちいち気持ち良い。ああ、人ってこういう距離の寄せ方するよな、という自然さがある。
これはひとえに、夢芽というキャラデザインのおかげかしら。
夢芽というキャラの新鮮さ
夢芽というのは、古くはエヴァの綾波的系譜のキャラだと思うんですけど、特徴的なのはその自然さですよね。
綾波というキャラは明らかにウソの感情をもったロボット的なアイコンとして描かれていたと思います。綾波は不自然なんですよね。
しかし、夢芽というキャラは、ダウナーであることに理由がちゃんと存在していて、劇中でそれを解消するために動いている。感情と動機とふるまいが自然に合致している。それがキャラクターとしての存在感や生っぽさにつながっている。
で、面白いなあと思うのは、蓬のほうは、まだギリギリヒーロー主人公のテンプレ内なんですけど、夢芽というのは、明らかに旧来の作品なら主役にぶつけるヒロインではないんですよね。キャラデザインとしては、別に前作の上半身担当や下半身担当のような、美少女としては描かれていない。眠たい顔をしている。
それをヒロインに据えて、しかも姉事件をまじえてドラマ自体にちゃんととりこんで描ききって、旧ヒロインたちに負けない存在感を出してきているあたりが、ダイナゼノンはほんと凄いなと思うのです。
たぶん視聴者は、回を重ねるごとに、どんどん夢芽を好きになっているはず。
なぜこんなに魅力的にみえるのかというと、それは彼女が多面的だからだと思うんですよね。
夢芽は多面的なキャラクター
本来、夢芽というキャラは、活発だと思うんですよ。それは唯一の友人とのやりとりにもでていますし、時折見せる夢芽の活動的なスタンスからもみてとれます。
しかし、彼女は姉の死をきっかけに長いダウナー期間にはいっており、いまの眠そうな女子高生キャラにおさまっている。そのままでは明らかにヒロインじゃないですよね。
ただ、姉に関しては積極的で、彼女自身も何かを変えたいと思っている。だからこそ、男子をさそってすっぽかしたりする、奇行をしていた訳です。
彼女は今の自身の有り様を別に好んでいるわけではない。
その証拠に、よくわからないけどダイナウィングにはなんとなく積極的に乗ってみる、という。
そして、その一連の振る舞いに接した蓬は、夢芽のときおり見せる、積極さや煌めきとのギャップに、ミステリを感じて惹かれている。
キャラクターというのは、いくつかのテンプレがあるんですけど、テンプレどおりだとやっぱりつまらないんですよね。だからこそ、人は何かの作品をみる時に、一喜一憂するキャラに魅力を感じるんですが、このスロースターターにしてダウナーな夢芽というキャラは、わかりやすい一喜一憂をしない変わりに、いくつかの秘密を抱えつつ、リアクションに意外性があり、しかもそれに理由がちゃんとつけられている。キャラクターとしては、とても奥深く多面的につくられている。
巨大ロボット、怪獣、蓬、友人、仲間たち、敵、そういった様々な光を当てた時に、それぞれ違った意外なリアクションを返す。そこが魅力的なのです。
さらにいうと、夢芽というキャラクターは、単体だとダウナーな女子高校生ですが、これが蓬がからむことで、ほんとうにいろいろなところから光が当たる。
実は、夢芽のいろいろな側面を引き出しているのは、蓬なんですよね。彼は、夢芽に近づきつつ、事件に巻き込む&巻き込まれることで、夢芽はいろいろな側面を見せている。
そして、視聴者は蓬目線で、夢芽を見たときに、夢芽はほんとうにコロコロと表情をかえていて、蓬が心惹かれることに納得感がでるような構造になっている。
ダイナゼノンという物語は、怪獣と怪獣使いとダイナゼノンの謎を追う物語なんですけど、こうみちゃうと、蓬が夢芽という人物を知ろうとする物語にもみえますね。
そういう考察を思わすしちゃうあたりも含めて、夢芽っていうキャラはよく出来た、新時代のヒロインだなって思うんですよね。
ダイナゼノンというのはおそらく前作にひきつづいて、幸福な物語だと思うので、物語の最後には、蓬と仲良くなるとおもいますけど──とにもかくにも引き続き、ダイナゼノンを推していきたいとおもいます。