リコリスリコイルはおもしろい?つまらない?
リコリスリコイルが、密かに注目を集めていますね。
理由は、その思い切ったありえない設定と、丁寧に作られた作画、OPのスタンド・バイ・ミー的キック、かわいいキャラクターと質の高い作画、そして「なにか起きるんじゃないか?」「鬱展開くる?」と思わせる、物語展開あたりでしょうか?
面白いもつまらないもまだちょっと評価しづらいですが、期待感があるのは間違いないと思います。
リコリスリコイルは予想外の展開に転がるのだろうか?
物語上の話でいえば、予想外な方向があるかといえば、フリが薄いので個人的には、大した展開には進まないんじゃないかなー、などと思うのです。
もちろん、裏切りや愛憎入り交じる何かがやってくることは大いにありえますが、それもまあ結城友奈は勇者であるあたりを考えると、入り方としては、そんなに広がりも鬱もなさそうな気がしています(視聴者であるワタシがスレているだけかもしれませんが)
ただ一方で気になっていることが一つだけあります。
それは主人公にして我らがヒロイン錦木千束のエキセントリックなキャラクターについて。
錦木千束というキャラの違和感と魅力
この錦木千束というキャラクターは第一話から見ていて、非常に掴みどころがないというか、軸の見えない主人公なんですよねぇ。
キャラデザインとしては、特筆すべきものはありません。
17歳の殺し屋で、かつて、旧電波塔をテロリストから守ったEpisodeをもっている、伝説的なリコリス。殺しの天才。そして、殺さずの誓いを立てた、緋村剣心みたいな立ち回りをする少女。
このキャラクターが本当に読めない。違和感がすごい。
なので、個人的にはこの作品はそこが一番の魅力に見えている。
なぜ違和感を感じるのか?
普通、物語の主人公というのは、その行動動機や目的というのは、一番最初に視聴者に提示するんですよ。
それを彼女はまだしていない。
彼女はなぜ?何のために戦うのか?というのを示していないんですね。
いちおう、それを補う形でバディを組む井上たきなの、リコリスとして出世したい、という目的は提示していますが、2〜3話あたりで、千束のほうについては特に明快な「目的表示」をしていない。
まずこれが、違和感の一つ。
次に、そのキャラクターの性質についても違和感がある。
第一話で、千束は同喫茶リコリスに住まう茶髪のアラサー女子の中原ミズキについて、かなり辛辣なコメントを述べているが、それはあのゆるゆるふわーんな性格からは大きく逸脱して、さらに親しさを超えた、棘のあるセリフに思えた。
この子、かなりエグい子なのかな?
という印象を抱かせた。
かと思えば、人を救い、殺さずの誓いのまま行動し、さらに地域のボランティアめいた活動などにも参加していた。
要は、一方でものすごく良い子なんですよね。
この振れ幅の違和感がすごいのです。キャラクターの性質、ほんとうはどういう人物なのが全く読めない。
だからこその魅力につながっているんですけど、ここでふと思うのです。
この千束のエキセントリックなキャラクターは狙ってつくっているのか、それとも製作側が属性を詰め込んで無理やりつくった結果、いびつな萌えキャラとして誕生しているだけなのか?そこが非常に気になっている。(※ちなみに私は、相反する属性を詰め込んだ結果、いびつなキャラがうまれることを爆豪勝己現象と心のなかで呼んでいる。爆豪勝己は、「俺様×ヒーローに憧れ×性格悪い×なのに正義のふるまい」という初期強烈にいびつなキャラだった。それについての記事はこちら↓)
千束がいびつであることの何が問題なのか?
このエキセントリックであることの理由というのは、実は作品制作上、結構致命的な問題を発生させるのです。
もし、錦木千束のあのエキセントリックでいびつな性格が、ねらってやっているものではないとしたら?
それは、単にその時々で、なんとなくかっこいいセリフや振る舞いを詰め込んだだけの、ツギハギ萌え属性のキメラ少女キャラクターでしかありません。
そうなると、作品はブレブレで、視聴者はただただ千束に共感できず、振り回され、取ってつけたような展開を目撃して、駄作として終わることになります。
では逆に、もし千束のあのキャラのブレ具合、エキセントリック具合をねらってやっているとしたら?
つまり、千束にはスプリガンの御神苗優ばりの二面性(御神苗優はかつてチルドレンソルジャーとして育てられた暗い過去があり、心を失い暴走することを恐れいてる)を持ったキャラクターであったなら?あるいはるろ剣の緋村剣心ばりの人斬り的な過去があったなら?
そうであるなら、個人的にはそこから、かなり面白いドラマ展開が生まれることになると思うのです。
で、僕は今の所、錦木千束=御神苗優的なキャラ/緋村剣心的なキャラづけがされてるんじゃないかと予想していて、ちょっと注目してみているのです。
つまり、過去は戦闘マシーンの狂気キャラ(だったらいいな
かつての錦木千束の描き方次第で、鬱にも名作にも駄作にもなる
以上のことから、この物語において、多分重要なファクターとなるのは千束の過去、そして過去のキャラクター(性格)です。
その、キャラクターがありきたりなものだったなら、このリコリコは大した作品にはなりません。それでも可愛いのでみるんですけどね。
ですが、もし千束の過去にエグいものがあったなら、そこから生まれるドラマは、ちょっとしたヒロイン主人公モノの新機軸になるんじゃないかな?
たしか、あんまりいないですよね?過去に心のない人斬り/戦闘マシーンだった、ヒロイン主人公って。男主人公に対するヒロイン役としてはめずらしくないですけど、メインのほうで過去キレキャラは興味深いかな、と。
もし千束が過去において心の無い戦闘マシーンだったなら、彼女に当てられた井ノ上 たきなというキャラクターはその分岐点にいる良いキャラだとも思いますね。
そして鬱展開もあるかもしれませんが──どちらかというと展開として予想されるのは、たきなが戦闘マシーンに戻った千束を救い出す百合展開かなー。
でもその程度だと、予想の範囲なので良作ですが名作にはならないかもしれません。
さて、錦木千束とリコリコの明日はどっちでしょうか?