五条悟と夏油傑〜二人は残酷でエモい関係のまま物語に消費されるキャラクターだってこと

呪術廻戦
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京都編を前にして虎杖悠仁の物語は一つ進みましたが、ここで最近出番のない五条悟について、記事を一つ。劇中ではしばしばその関係が描かれている、五条悟と夏油傑について、その関係の意味を解説したいと思います。

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五條悟と夏油傑の悲しい関係

単体で無双する俺ツエーを地でゆく存在。完全無欠の五条悟さんですが、バディもの大好きな原作者によって、かつては相方が設定されていたのは、みなさん御存知の通りですね。

この夏油傑、今では相方ではなくて、敵になっちゃってますけど、かつては、五条悟が唯一背中を預け、また唯一の親友とした人物でした。

(C)芥見下々/集英社

そして夏油傑は、過去編において、呪術高専に反旗を翻し、乙骨らと戦った後に五条悟自らの手で処断される、という悲しい死に方をしています。

彼が反旗を翻した理由は「なぜ呪術師が一般人のために犠牲にならなければならないのか」という点でした。詳しい話や経緯、能力については彼のwikiでもみていただくとして、僕はそんな夏油傑が五条悟にどんな影響を与えたのか、すこし踏み込んだ解説をしてみます。

五條悟はどのタイミングで最強になったか?

物語上の話でいうと、僕は、この夏油傑というキャラクターの存在は、実は五条悟が最強である理由に繋がっているのが興味深いなって思うんです。

それはどういうことか?

劇中最強の五条悟というのは、当たり前ですがかつては未熟でした。特に、伏黒パッパと血で血を洗う戦いを繰り広げていた呪術高専の生徒だった頃は、その未熟さゆえに一度死にかけていますよね。

ですが、その後領域展開を身に着けて、大きく成長し、伏黒のお父さんを退けています。本編過去編においては、呪術師としての能力はこのエピソードをもって拡大し、五条悟は実質的に最強へと変化した、ということになっています。ちなみに、この当時、夏油傑は健在でした。

(C)芥見下々/集英社

ですが、思うのは恐らく、伏黒パパとの戦いで成長したのは、能力だけだったんじゃないかな、と。このタイミングでは恐らく五条悟はまだ成長しきっていないと思うんです(ま、外見も若いままだし)。まあまあ、強くてもイキったにーちゃんですよ。

さて、それじゃどのタイミングで五条悟は心身共に最強になったのか?

それは、やっぱり夏油傑を自らの手で殺した時だと思うんですよね。特に呪術廻戦においては、五条悟が夏油傑を殺したエピソードというのは、非常に明快で理にかなった成長タイミングだと思うんです。

感動プロセスについて

物語において、重要な感動プロセスの一つに「成長」というものがあります。この成長というのは、AからBへと移動する中での変化ですよね。変化しない物語というのは当たり前ですがつまらないんです。フリがあってオチがある。だからこそドラマが生まれる。それが物語というものです。

で、これが少年マンガやアニメとかだと、良くあるモチーフとしては、少年から大人への心理的、外見的変化です。強さの変化はもちろんですが、心も初期と後期とでは大きく変わる。そういうものが、少年マンガの醍醐味であったりするわけです。

そして、少年が大人になるというのはどういうことか?

これは、呪術廻戦の中でナナミンが言っていますよね。「人は小さな絶望を積み上げて大人になる」というような事を。

(C)芥見下々/集英社

皆さんも心当たりあると思いますが、これは全くそのとおりですよね。

さらにコレを物語のダイナミズムに組み込むとどうなるのかというと──「少年というのは取り返しのつかない事をやらかして、絶望をすることで大人になる」という話になるんです(by富野でもあるんですが割愛)。これがドラマの醍醐味になっちゃうんです。逆にいえば、これがなければ成長しないし、作品は絶対に面白くならない。

少年少女は絶望を繰り返す

さて、呪術廻戦の本編に戻りましょう。

虎杖悠仁も伏黒恵も釘崎野薔薇も、劇中において、ほんとうに小さな絶望をくりかえして大人を目指しています。そのプロセスが面白いし尊いんです。とくに、主人公の虎杖悠仁の絶望は絶大です。本人死にかける分にはまだいいですが、吉野順平を救えなかった絶望は、確実に虎杖から少年であることを奪いされいました。ま、渋谷事変ではさらなる凄まじい絶望が待っているんですけどね。。

(C)芥見下々/集英社

伏黒や釘崎もおそらく絶望を積み上げるであろうことが予想されます。伏黒は姉に絡む絶望、釘崎は地元がらみの絶望でしょうか。いずれにせよ、少年と少女が何者かになるには、物語においてそういうプロセスを強いられる。

ここまで来ると言いたいことがもうわかっていると思います。

夏油傑という、五条悟にとっての絶望と後悔

五条悟が最後に経験したもっとも大きな絶望というのは、唯一の理解者でありパートナーであった夏油傑を処断することです。

伏黒パパ編で、能力を開花させましたが、物語構造上でいうと呪術廻戦0巻ではまだ心は成長しきっていなかったと思うんです(別にそういう描写はないんですけど)。

その彼が本気で最強キャラになるには、それに見合う絶望が必要なんですよ。そのために、夏油傑というのは物語上の犠牲になった。五条悟は、唯一小言を言って、他愛もない冗談を言って、甘えられた相方を自ら殺したんです。そして失うものがなくなったから最強になったんです。

その時五条悟の抱えた絶望は何だったでしょうか?

これだけの力を手にしていながら、なぜ親友の夏油傑を救うことができなかったのか?

ですよね。

さらに、再会した際に抱いたであろうことは──

「何故、あの時ちゃんと肉体を処分しておかなかったのか?」

ですよね(このせいで後日数千人単位の人が死んでる気がする)。

(C)芥見下々/集英社

五条悟は、恐らく本質的には、虎杖や伏黒や釘崎が死んでも、大して動揺しないですよね。それは夏油傑を救えなかった絶望には及ばない。

夏油傑というのは五条悟を成長させるトリガーであり、現時点でもさらなる成長を促す可能性をもった爆弾でもある。そういう関係が、五条悟と夏油傑の間にはある。物語において約束された、絶望を伴う、悲しい組み合わせ。

それが、五条悟と夏油傑の、関係の真実だってことです。

芥見下々の絶望劇場ェ

本編において、夏油傑はメロンパンに乗っ取られながらも、かろうじて何かの意識をもっているようでした。そこから、どんな結末になるかは、まだわかりませんが、殺された夏油は絶対に人間に戻ることはなく、五条悟は心を殺して人外の道を突き進むでしょうね。待っているのは、確実にさらなる絶望と後悔だってことが切ないですよね。

(C)芥見下々/集英社

その上で、五条悟と夏油傑には、後悔だけでなく何がしかの救いがちゃんと持たされるといいなって思います。コレを見る限り、二人の物語はまだ終わっていないので。

はぁ、それにしても芥見下々、ほんと容赦なく残酷物語作るよなぁ。

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