リゼロのアニメヒット理由のおさらいと、ゲーム的幻想世界に見る少年たちの夢。

Re:ゼロから始める異世界生活
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リゼロ二期が盛り上がってきました。おさらいのために1期を見直したので、ついでにリゼロがヒットした理由を改めて個人的に整理したいと思います。

だいたい気づくのは5項目くらい。以下につらつら書きます。

誰もが思いつきそうで、誰もやらなかったアイディア

まず一つ目。リゼロといえばループ=死に戻りですね。この死に戻りというのは、ゲーム世代の皆さんには御存知の通り、全滅したらセーブポイントからやり直す、というアレですね。これ、別に設定としては過去に全く無かった訳ではないんでしょうけど、本格的に物語に取り入れて、それを成功させ、しかも広くコンテンツとして広めたのはリゼロが初めてだと思います。

リセット自体は珍しいものではないと思います。過去にも死に戻りに似たものはありました。しかし類似品の多くは、タイムパラドックスを扱ったループ物のほうが多かったかもしれません。他方、不死を獲得して生き残るというパターンなどは、全くの別物として存在していました。タイムパラドックスを扱ったループ物なら、BTTFやドラえもん。不死ならばボトムズやサザンアイズ。自分だけが生き残り物語をつづける、という形式は別に珍しいものではなかったかもしれません。また、ゲーム的ループでいうとリゼロより前にはシュタインズ・ゲートが存在しており、あちらはあちらである種の先駆者として存在しています。

しかし、ここまで明快に死に戻る作品ってリゼロ以前だと思いつかないんですよね。オールニードイズキルも、たぶんリゼロの後か、恐らくは同時期にあたるでしょう。

誰もが思いつきそうなものでありながら、誰もやっていなかった。非常に稀有な作品だと思います。正直なところ、これはやったもん勝ちですよね。そして、よく一番最初にやったなぁ、と思います。

それをミステリーに昇華する実力

一方で死に戻りって、他の人もやりそうですよね。というか同時期の”なろう”をほじくったら、もしかしたらそういうモノもあるのかもしれない。しかし、そうであったとしても恐らくリゼロだけが注目されてメジャーになると思われます。そこには、やっぱり死に戻りを逆手に取ったリゼロの構成の巧みさがあると思うんですよね。

もしリゼロがひたすらあっけらかんと死に戻るだけの物語だったら、ヒットしなかったと思うんですよ。アメリカにリトル・ニッキーというサタンの息子が物語上の必然から殺されて毎回魔界に死に戻るアホ映画があるんですが、ああいうノリだったらネタコンテンツで終わっていたでしょう。

けれどリゼロのほうは、構成を見ているとよく分かるんですけど、死に方と、次回につながる情報提示の仕方と、伏線の回収の仕方が本当によく出来ている。

毎度起こる事件のショッキングさと、そのたびに散りばめられる謎、苦難の末にそれらの情報を集めて、一筋の生存への道筋を探し出すという展開。もちろん、シュタゲもちょっと似たようなことをやっていましたけど、リゼロはファンタジーということもあって、やたら人を殺せるし、本当に見ていて飽きないんですよね。このあたりは、ミステリー的な構成も相まって、本当に秀逸な作品になっていると思います。

抜かりのない世界観

さらに、それらの展開を補完する世界観。

物語というのは「大きな謎」と「小さな謎」の組み合わせ出てきているんですけど「大きな謎」というのは、当たり前に事前に準備をしなければ機能しません。

このリゼロは本当に丁寧に大きな謎を仕込んでいるように思える。「嫉妬の魔女」はエミリアである可能性が高いですが──こういう大きなミステリを始めに持ってしまうと、物語は結構不自由になるんですけど、そこをちゃんと作りきって展開させようとしていると感じる。魔女は7つの大罪の数だけ存在し、それらは世界の成り立ちにも絡んでいる。他にもこまごまと様々な設定を作りきって話を進めている。スバル君他は、その大きな流れの中にあって小さな謎を一つづつ解明して、物語の結末に向かっている。こういうものは当たり前に世界観をちゃんと作っておかないと、破綻するものです。

今の所破綻も手抜きもチープ化するといった兆候もみられません。

魅力的なキャラクターたち

続いて忘れてはいけないのは──その謎の満ちた世界で立ち振る舞う、魅力的なキャラクターたち。エミリアやレムやラムはもちろん、他の王候補たち、男性キャラクターもけっこう充実しています。これが本当に魅力的に描かれている。

大事なのはお人形さんではなくて、キャラクターの息づかいですよね。エミリアは良い子だけどちゃんと芯の通ったキャラクターになっている。レムやラムもただ使い潰されるだけの都合の良いキャラクターじゃない。ベアトリスだって何かを抱えている。さらには、その周辺のライバルたちもかなり丁寧。そして彼ら彼女たちは、時にスバル君を拒み、諭し、愛し恋する。だいたいね、なろう系ハーレム物の主人公以外の男子ってモブ化が激しいのに、リゼロはそういうことがない。敵ですらキャラが立っていて魅力的。そして何よりも──のたうち回るスバル君が、等身大で好感が持てる。

つまりは、死に戻り設定×ミステリ×世界観×キャラクターと4つの要素がどれも高水準にあって、それらが正しく絡み合った結果、傑作としてこの作品は存在できていると思うのです。しばらくこれを上回るなろう系作品というのは出てこないんじゃないかな、と思える。(このすばは別枠で😃)

なぜ日本発でこんな作品が?

さて、ここまで考えて、一つ疑問があります。

冒頭で、僕は「誰かが考えそうだけれど、誰もやらなかった作品」というようなことを申し上げました。それは、世界を見渡した時にも同じことが言えると思っています。SFやファンタジーではかつて10年は先を行っていた欧米諸国において、死に戻りというものが出てこなかったのは何故なのか? もっというと「リゼロのような死に戻り」が出てこなかったのは何故なのだろうか?

ゲーム自体は欧米諸国にもありましたよね。ウィザードリィもあるしウルティマだってあります。その他、死ぬことでセーブポイントからやりなおすRPGなど、いくらでも存在していたと思います。先にあげたリトル・ニッキーだって死に戻りです。

では何故日本だけから、こういう真っ向勝負の「ゲーム的死に戻り」を扱った作品が出たのか?

僕は、実はエロゲ/ギャルゲー市場というものが存在したかどうか、というのが大きいんじゃないかと思っています。

テキストノベルで萌え絵つき18禁ゲームって、大きな市場としては日本にしか存在していないんですよね。エロゲ/ギャルゲー的ゲームは、かなり速い段階からマルチエンディングを採用していますよね。ゲームは物語上の分岐によって様々な心を揺さぶる結末が存在し、ゲーマーはそれらを堪能した上で、本当の幸せな結末を目指してトゥルーエンドを目指す。こういう形式のゲームが、一番最初に広まって、しかも萌え絵とセットで市場を作ったのは、やっぱり日本だと思うんですよ。

つまり、リゼロはRPGじゃなくて、マルチエンディングを持つエロゲがその根底にある。だから、日本でしかリゼロのようなストーリーにも勝負を仕掛けたアイディアは出てこなかった。考えてみれば当たり前なんですけども、これが一番大きいのかな、と。

エロのないエロゲの重要さ

ただ、リゼロは一見、マルチエンディング系エロゲの体裁をとっていますが、そのままというわけではありませんよね。エロゲファンタジー風ではあるんですけど、スバル君はとことん紳士です。

もし、リゼロがほんとうにエロゲ作品だとしたら、ここまでヒットはしなかったと思うんですよ。シュタゲもフェイトもそうですが、結局一般化するにあたって、エロというのは、あれば嬉しいんですが大多数をターゲットとする際にどうしても邪魔になってくる。あらゆる要素をクリアした上で「直球の性的エロス」をちゃんと排除したことはヒットにとって重要な選択だと思っています。

みんなエロは好きですよ?でも、世の一般的な男子というのは、どこかで一方的なエロスはケシカラン物だと思っている。これはジブリとかの影響のせいだと思うんですけど、男女は健全に心を通わせてから添い遂げるべきだ、というバイアスが本当に強く存在していると思っている。

そういう倫理観に対して、リゼロは徹底的に紳士的な作品として作られているんですよね。すばる君はおいそれとエロに走らなかった。すばる君が紳士だったから、作品が広く受け入れられた。これは西尾維新の化物語にも通じるところがありますが(あっちは変態紳士だけどね)、とにかく品位を保ったことが、ターゲットの幅を広げることに一役買っていた。

どう考えてもエロゲ展開なのに。どう考えても、すばる君はレムに無条件で手を出せるポジションにたどり着いたのに、それをしなかった。だからこそ、広く受け入れられた。

リゼロはゲーム世代男子の夢

まとめると以下の通り。

  1. 無二の切り口「死に戻り」
  2. それを適切に使い切った「ミステリ構成」
  3. 説得力かつ魅力的な「世界観」
  4. 視聴者の心をつかむ「キャラクター」
  5. 世の倫理観に準じた「エロゲ構造にあってエロのない正統ファンタジー」

これらが絶妙に合わさった作品です。後付でつらつらと要点をあげましたが、これ全部クリアするの、とても大変だと思います。

で──感じるのは、ようするに、これらの諸条件はゲームに慣れ親しんだ特定世代の男子が望む世界だよな、と。一昔前なら、別の世界になるんでしょうけど、今の世代はやっぱりゲーム的なものから展開される物語に心を寄せるんだと思うんですよね(SAOも同じ)。つまりは、リゼロはゲーム男子の夢の具現なんだと思います。

そりゃ、ヒットするわ、と思える。

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