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ワンダーエッグプライオリティ感想〜作品の「お前らこういうの好きでしょ?」感にどうも警戒しちゃう

ワンダーエッグ・プライオリティ

ワンダーエッグプライオリティの第一話を見ました。

未整理ながらも、ざっと見た感じの感想をだらだら書いてみたいと思います。

令和に引っ張り出された平成脚本家のファンタジー

この作品、売りは野島伸司が初めて原案と脚本を手掛けるオリジナルアニメーション。ということ。野島伸司は伝説のティーン向けドラマの脚本家ですね。

高校教師とか、愛という名のもとにとか、家なき子とか、聖者の行進とか、いろいろと物議を醸す作品、お茶の間に提供してきた、平成初期の脚本家さんです。

アニメーションは、A-1 Pictures高円寺スタジオから派生して作られたCloverWorks。アニプレックスの子会社で、日本における最先端の大衆向けアニメーションを受け持つ会社の一つですね。質は折り紙付き。

で、この野島伸司という脚本家さんですが、エグ目の衝撃展開を得意とする作家性が強い人かと思っていたんですが──今にして思うと、作家性というより、ただただ青春苦難をネタにこれでもかとショッキングなシーンをぶっこんでくる、技法の人だったと思うんですよね。

そんで、ゼロ年代(よりちょっと前だけど)に爆発する世界系のはしりだった人だとも思う。当時はアニメーションは完全に子供に向けられたものだったから、野島伸司という才能はティーンから20代までを対象にできる実写ドラマに置かれた。そしてショッキングな展開をやったことで物議を醸したとか、そんな感じ。

えー、何言ってるかわからなかったら読み飛ばしてもらってOKです。話をもどします。で、ワンダーエッグプライオリティ面白いの?つまらないの?

ワンダーエッグプライオリティ面白いの?つまらないの?

で、作品評なんですがー、うーん、うーん、お、面白いよ(超奥歯にモノがつまった言い方)。

いやね、シナリオうまいなー、展開うまいなー、キャラかわいいなー、ですよ。でもそこには、平成初期のアレな空気感がただよっていて、現代の令和の世にこれがバチっとはまっているかっていうと、ちょっと違う気がしたんです。

さらに鼻につく物が他にもある。

私はこの作品、個人的にはめちゃくちゃあざといなー、と思うんですよ。だってさ、作品ポスターからして◯◯顔ダブルピースキメてますよ?

©WEP PROJECT

なんでダブルピースしてるの? 作品におけるその必然性は何よ?

君ら、こういうの好きでしょ?感がパないんです。

いやまあ、好きですけど!ダブルピース!

新海誠&細田守程度ならおれらも作れっぞ

思うに、これのプロデューサーが目指すところって、新海誠や細田守の、世界系思想&ティーン感の作品をシリーズアニメでやっちゃおう、ですよね。

で、かつてティーンドラマの才者たる野島伸司を引っ張り出してきた。そら、面白いもんできますわ。衝撃展開もアニメ的な可愛さで「緩和」できるし、ごまかせるし。ああ、たしかに高校教師的物語って、アレが令和の今が初出で、新海誠&細田守風の絵柄でアニメ化したら、若い子らにエモいと思わせて、お金かせげるかもなー、なんて思ったり。

で、その内側には、新海誠&細田守程度ならおれらも作れっぞ感が、ビジネスしてまっせ感がぷんぷん香ってて、なんか嫌なんです。

気にしすぎですかね?

でもちょっと引き続き警戒させてほしいんです。いくつかその理由引き続き書きます。

野島伸司は思想を何も残さずに一度消えている

野島伸司という脚本家は、ティーン向けの不幸エンタメをつくる点においては、ほんとうに平成初期を代表する天才クリエイターだと思うんです。

ソレはもう間違いない。

ただ、さっきもいいましたけど、彼の作品がティーンにバイブルになるような、思想的なシミを特定世代つくったかというと、実は何も残していないんですよね。さらにいうと、数字がとれなくなって局からも声がかからなくなって一度消えている(TV時代の残酷さよ)。

野島伸司という脚本家は、ティーンを主軸に据えて衝撃的展開のドラマをはじめてやってみせたってだけで、ドラマは面白く見れたけれど、そこに共感は生まれなかった。

というか昭和末期から平成初期のドラマって、やっぱ絵空事なんですよね。おとぎ話の話なんです。だから、いかにショッキングな物語であっても、雲の向こうのお話であって、ティーンとの乖離はひどくて、「あれは僕たちの物語だ!」という、実感がわかなかった。

むしろそのへんは、池袋ウエストゲートパークとかクドカンのほうが「僕ら感」が強かった。窪塚も長瀬もカッコイイしね。

アニメでいうと、その少し後のエヴァとかのほうが特定世代でのインパクトが強いですよね。まあ、エヴァも思想はなくて技法の作品なんですけど、あっちには、少なくとも、庵野監督が血反吐を吐いてのたうち回って作ったことによる「ライブ感」や「生っぽさ」があって、それが新しいチャレンジを探していた新世代の興味を引いた。作品ではなくあの当時にアレを作るという行為に共感が生じた。

対して、野島伸司という脚本家とその一連のドラマは、作り物としてはよく出来たパッケージでも、中身は、遠い世界の話に見えるんですよね。

ちなみに、新海誠&細田守はどうなのか?

ちなみに、新海誠&細田守はどうなのか?

この二人については、もう完全に思想の人で、作家性のある作品を作る人ですよね。僕らは世界をこういうふうに見ている!世界はこんなにエモいんだ、だからみんな見て!みて!をやってる。それがいいか悪いか別として。

実は良く見ると、新海さんも細田さんも流石に年齢的には世代的なズレた感覚も出てきちゃっているけど、それでも、特定世代が「ああこの監督さんらは、自分たちのための作品を四苦八苦して作っているんだ。何か大切なものを伝えようとしているんだ」という好感がある。

新海誠と川村元気からは金稼いでやる感がぷんぷん匂いますが、同時にRADWIMPSの音楽にのせて、俺たちの時代に傷跡をつくってやる!感もちゃんと漂ってきているんです。

そう考えると、やっぱり昔の野島伸司さんというのは、いまここに出てきている限りにおいては、どうも「僕らの物語」感が薄い。かつては、売れ線の衝撃展開だけを繰り出す、プロダクションやプロモーションに寄り添う力を持った脚本家であって、時代や世代に寄り添う作家ではない気がするんですよね。

だからこそ、ワンダーエッグプライオリティには、ニセのティーン感とか作り物感とかがあって、まだちょっと警戒しちゃう。

展開とか、伏線の貼り方とか、主人公の動機の立て方とか、シナリオ的にはめちゃくちゃうまいんですけどね。そのへんさすがです。現代的なモチーフが入っているから、いい感じに今っぽく見えるんだけどね。。

もう少し細かい話もしましょう

具体的な内容についても言及します。

一話の引きこもりからの友情の大切さを思い出す展開って、導入として虫に導かれて自身の殻をやぶるという展開になってますが「お話としてはベタ」ですよね。あれ古くない? ソレいまこのタイミングでやるお話?

©WEP PROJECT

引きこもりって、たしかに今も存在していますけど、その理由ってああいう友情めいたふんわりした古い価値観で、提示と解決がなされる時代じゃない気がするんですよね。昨今は大戸アイのように、閉じ込められてモンモンと悩む時代じゃない。

今の時代って、望めば、学校に行く以外の脱出方法ってほんとうにすぐに見つけられるんですよ。

テレビしか無い時代には、テレビの中には手の届かない美男美女やリア充しかいなかったけど、今の時代なら、You TubeやTik Tokやインスタやツイッターを見れば、自分と同じ境遇にあって、すこし別の方法でもって、世に飛び出す手段を見つけた、先駆者たちが、ジェンダー種別かかわらずゴロゴロいるんですよ。

なんなら学校だってN高がある。

そういう時代に、友人の死によって引きこもることを強いられた、You Tubeさえ見ていない主人公の大戸アイというのは、ぱっとみの絵が可愛くてエモいけど、あんまり参考にもならないキャラクターなんですよね。努力してリア充目指すなら、パッケージとしては、まだ、弱キャラ友崎くんのほうが勉強になりそう。

今の時代の物語がどういうものかというと、例えば、進撃の巨人や鬼滅の刃、呪術廻戦の登場人物らは、初期無力ではありますが、メンタル的にはとっくに自立している。ただ、外に出るための手段がないから、もがいていて渇望している。彼らの物語とは願いに手段を見つけて獲得し行動する物語なんです。新海誠は天気の子だって、望んでも脱出できない「貧困」をパッケージとして扱っているけど、まずふたりとも自立したところから始まっている。自立してみたはいいけど若く貧しくて、手段がなくて「天気を操る」という手段に振り回される物語なんですよね。あれも、時代に対応した物語になっている。

対して、ワンダーエッグプライオリティの主人公は古いタイプの主人公で、メンタル的に自立する前までを物語としている。何かを願うまでの物語です。これは昭和や平成初期の古い物語ですよ。この手の話は、エヴァのシンジくんで終わりです(シンジくんは作者のせいでいまだにメンタル的に自立できずぐるぐる同じところをまわらされているけどね)。

そういう部分も詳らかにみていくと、絵はすばらしく話も面白くても、思想的には前時代的なものになりそうだなー、と予想している。もしほんとうにそうなら、野島伸司さんもこれを作ろうとしたPも時代が見えていないと思える。ま、このあたりは最後まで見ないとわからないかもしれないんですけどね。

令和に戻ってきた野島伸司は何を作る?

さて、そんな中もどってきた天才脚本家の野島伸司ですが、果たして新しい時代に新しいメッセージをなげかけることができるのでしょうか?これは僕たちの物語だ、というふうになりえるのか?

今後の流れとして、私が一番気にしているのはそこですよ。考えすぎって言わないで。

ええ、アニメーションは素晴らしいと思いますよ? キャラもかわいいし、作品としての質はとても高いでしょう。ですが、時代に合わせた新しいものが出せるかどうか、そこについては、今しばらく見てみないとなんとも言えないところです。

©WEP PROJECT

そんなこんなのワンダーエッグプライオリティ第一話感想でした。

まあ、見るんですけどね。たぶん。最後まで。だってキャラかわいいし、作画気合はいってて所作が尊いし(結局そこ?)。

2020年1月28日 追記雑感書きました:ワンダーエッグプライオリティは良いワインなのに泥が1滴垂らされてしまっている作品かもしれない(3話時点の感想)

2020年2月12日 追加考察書きました:ワンダーエッグプライオリティは、正しい物語なのか?そうでないのか?