進撃の巨人〜アルミンは知的なだけではない特別なキャラクター

進撃の巨人
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進撃の巨人が終了しました。

進撃の巨人は、足掛け11年半の及ぶ大作でした。

今回は、そんな進撃のアルミンについて、その「特殊性」や「重要さ」をプロフィール交えて、取り上げてみたいと思います。ネタバレアリなので最終回未読の方はお気をつけください。

©諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会
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アルミンの雑プロフィール

まず、アルミンのプロフィールを駆け足で。

本名はアルミン・アルレルト。163cm/55kg・初登場時は15歳⇒マーレ編以降で19歳。出身地は、ウォール・マリア南端のシガンシナ区で、誕生日は11月3日。

外見は太眉に丸めの鼻と顔、そしてボブカットの金髪碧眼の少年。アニメ版では予告ナレ担当。

立ち位置としてはエレンとミカサの幼馴染で、エレンとは幼少時からの親友。祖父が隠し持つ外界の書についての情報をエレンと共有したことから、エレンが外に興味を持つきっかけにもなりました。

性格は理性的で探究心が強く、外へのあこがれが強い。そのせいか、街ではよくいじめられていたそうです。劇中においては、初期に「口減らし」が行われたことから、王政を嫌っており、訓練兵団に入りました。頭脳が優秀であったことから、他の選択肢もありましたが、本人は最終的に調査兵団へ入団をしました。

©諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会

性格や能力は、ご存知のとおり、小柄で非力(兵団のなかでは)。そのせいで活発さにかけるが、強い意思ももつ。一方で知性や判断力については優れたものが有り、調査兵団の中でも、しばしば参謀的なポジションで活躍をしていました。

物語後編では、ベルトルト扮する超大型巨人との戦いにおいて、身を張った活躍をした結果、瀕死の重症に陥り、さらにそこから、ベルトルトの超大型巨人を引き継いでいます。しばしば、ハンジやリヴァイの代わりに指揮をとることもあり、最終的には調査兵団の団長にまでのぼりつめていました。

身体能力こそ劣り、また劇中では時に色物扱いされて、女装させられたり、ファンからはかわいいなんて言われていましたが、すぐれた知性によって、揺るぎないレギュラーポジションを確保していたのがアルミンという存在でしたね。

さて、ここで今回、私が注目したいのは──アルミンというキャラクターの性質や能力だけでなく、物語における特殊性です。

進撃におけるキャラクターと多様性

進撃の巨人というのは多くのキャラクターが登場します。

主要な人物はエレン、ミカサ、アルミンの三人でしたが、マーレ編に入ってからは、ライナーとジーク、そしてガビとファルコにもスポットがあてられましたね。その他にも、リヴァイやヒストリアの過去等、さまざまなキャラクターに視点が行く、複雑な構造をもった物語でした。

これは進撃という作品が、様々な人物の視点から物事の善し悪しを描く、多面的なお話だからというのがあります。とくに、マーレ編以降は、前半のエレンたちの行動に対して、別方向のベクトルをもったライナーやファルコたちを丁寧に描くことで、本当の正義や悪がなんであるのかを描こうとしていました。

©諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会

進撃の巨人というのは、かなり複雑な物語であり、一人の人物の視点では進まないし、語り尽くせないお話になっています。進撃という物語を語るには、どうしても、複数の登場人物たちの視点が必要になっていました。

面白いなと思うのは、キャラの役割です。物語というのは、どんなものであっても、エピソードごとに主軸となるキャラクターが配置されます。読者はそのキャラクターの視点で事件を観察し、感情移入することで物語を進めるのです。

そして、初期においては、その視点は主人公グループのエレン・ミカサ・アルミンに委ねられていました。

しかし、この3人の主要キャラクターは、個別に見ていくと結構イビツで、不完全で不自由な登場人物でもありました。

三人の役割について

まずエレンですが、初期のエレンは口だけは達者な向こう見ずなイキリバカでした。彼は、巨人の力を継承しておきながら、しばしば個人的な理由で暴走し、仲間たちを助けることもありましたが、危機に陥れることもありました。こういうキャラクターは、低年齢層向けの少年漫画の主人公としてはスタンダードですが、進撃のような複雑な構造とメッセージ性をもった物語だと、どうも本当にバカっぽくなってしまいます。建設的な判断が出来ないので、物語を正しい方向に進めるのに苦労するんですよね。

で、それを補佐する役割として、ミカサというヒロインがいますが──こっちも脳筋でした。というか、ヒロインなのにエレン以上に、殴って問題解決をするタイプでした。彼女は目の前の事象に対して、生き残る強さはとてつもなく優れていますが、やはり進撃の巨人という奥深い物語を進める役割を担うには、物足りない存在でした。

そして、最後にアルミンです。彼は知性を担います。ですが一方で、非常に気弱で、非力なキャラクターです。エレンがイキリバカなら、アルミンはイキリ知性バカです。彼も、一人ではなかなか生き残れないタイプでしょう。

しかし、よくできているのは、この3人が揃うことで、進撃という物語は初めて前に進む物語になっていたということです。

©諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会

口だけのイキリバカ×肉体バカ×イキリ知性バカ、この3人がそろってはじめて、進撃という物語は機能するようにできているのです。

なかでもアルミンの役割は重要です。というか──進撃の3人組に、アルミンが配置されたことは、作者のセンスが非凡であることの表れだと思います。

アルミンが背負った物語における特殊性

通常、少年漫画王道のお話ではしばしば「主人公を脳筋にすることで、お話を強引に進める」という手法がとられます。それは別記事にも書いたとおり、少年誌では見慣れた風景ですね。しかし一方で、主人公が脳筋だと、お話は薄っぺらくなります。ちなみに、青年誌の主人公は脳筋以外もいるので、物語に厚みが出るんですが、今度は逆に小難しくなりがちです。それはターゲット層を狭めて、読者を減らす可能性があります。ヒットする物語というのは、この非常に難しバランスをうまくとっていることが多いんですよね。

進撃の巨人がしっかりしているのは、その知性と脳筋の役割を、いくつかのキャラクターうまく分散したことです。それによって少年誌的なわかり易さや爽快感を担保しつつ、奥深い物語を描くことに成功していました。

中でも、アルミンという知的キャラは物語を進めるにあたって非常に重要なポジションにあります。彼がいるお陰で、物語は本編においても、作品構成上においても何度も危機を脱しています。

アルミンは、劇中における問題解決の役割の、そのほぼすべてを担っています。初期においては、エレンとミカサの暴走を静止し、仲間たちの死を防ぐ貢献を何度もしています。エレンが巨人化した後は、エレンの重要さを兵団に説き、敵方の巨人たちが活動をしはじめてからは、内部における敵の存在をいち早く発見しています。

©諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会

実は、進撃の巨人において、重要な選択を最も数多く行い、最も的確に問題解決しているのは、エレンでもミカサでもなく、アルミンなんですよね。

これは、ハンジやエルヴィン団長やピクシス指令や、リヴァイにはできないことでした。肝心な場面で物語を進める役割は、常にアルミンが担っていました。客観的に見ていくと、進撃の巨人という漫画において、初期のエレンとミカサという人物や、周辺キャラクターが、いかに視野狭窄な思想や行動をして、物語を進めないかよく分かるんですよね。

アルミンがいなければ、エレンは巨人化した時点でとっくに兵団に殺されて解体されていたかもしれない。アルミンがいなかったら、ミカサだってとっくに食われていたかもしれない。アルミンがいなかったら、マーレに始祖の巨人は奪われていたかもしれない。アルミンがいたから、エレンは、マーレ組の、ライナーやアニやベルトルトや、ガビやファルコのような崩壊をせずに、物語を完遂できたのです。

アルミンというのは進撃の巨人における最重要キャラだと思うんですよ。

彼がいなければ、エレンは外へ興味を持たず、巨人化したエレンは生き残らず、マーレを退けられず、エルディア人の負の連鎖が止められることもなかった。地ならしだって止められなかった。

あらゆる場面でアルミンというのは本当に重要な役割を担っていました。でも、イマイチ評価されてないんですよね。アルミン。

で、ここまで見てきてふと思うのです。

実は、物語の転換点への影響力、そして実効性で考えると、アルミンのほうが、進撃の巨人という物語の、主人公視点としてはふさわしい存在なんです。

実は主人公(視点ポジション)に最もふさわしいアルミン

ミステリー等の物語創作において主人公を決める際の考え方の一つに「誰の視点でその事象を描いたら、最も物語がわかりやすく面白くなるか」というのがあります。

その視点を持つ存在に必要なのは「客観的な分析力」「実行力」「重要なところにいつもいること」「変わらぬ性格やポジション」「好奇心」「問題解決のモチベーション」「劇中テーマにリーチする行動動機」等々だったりするのですが、では進撃の巨人において、もっともそれらを数多くこなす&要素保有しているのは誰か?と考えるとどうでしょう?

それは、 エレン? ミカサ? リヴァイ?ジャン? ハンジというのも無くはないですが──これはどう考えてもアルミンなんですよね。

そもそも主人公のエレンは、劇中後半マーレ編以降は「あのイキリバカなキャラクターのままでは物語が進められなくなってしまった(作者の求めるオチにはたどりつけそうもなくなってしまった)」ので、キャラを変えられてしまった。

©諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会

後半のエレンはどうみても主人公ではないですよね。そしてミカサは、脳筋からはじまってずっと脳筋のままなので、何も出来ない。そんなエレンやミカサ代わりに、マーレ編以降では、たぶんガビとファルコが新たな主人公視点として設定されたようですが、これもどうも使い勝手がわるかったのか、あまり目立った活躍をさせてもらえませんでした。

しかしアルミンはどうでしょう?

実はアルミンというキャラクターは始めっから最後まで、ずっとエレンを信じ、ミカサを支え、変わらず知性的であり、問題解決をして成長を怠らずに過ごしています。

さらに、最後には調査兵団の団長にまで上り詰めています。

アルミンは「変わらぬ物語視点」としては本当に最適なんですよね。

進撃の巨人というのは、構成としては「エレンが巨人の力に目覚め、世界の秘密を知り、それをどう解決するのかを多面的に描いた物語」になっていますが──これ、実は「アルミンという脆弱な少年が、エレンとミカサという二人の親友を助け、支えて追いかけ成長しつつ、世界と巨人の謎を解く物語」としたほうが、構成的にはしっくりくるんですよね。

エレンやミカサのアクションを含む多視点で描いても、エレンが敵に回っても、それで何一つ破綻することもないんですよ。実際、アルミンはアニメ版において語り部役を担っています。つまり、本来の主人公視点に最もふさわしいのはアルミンだったりするのです。

そういう考え方も出来てしまうあたり、アルミンというのは本当に重要なキャラクターなのです。

個人的には、マーレ編はもっとアルミン視点で「なぜエレンが変わってしまったのか?」というミステリを解く物語にしても面白かったんじゃないかな、って思っています(実際、そういう要素もちゃんとありましたよね)。進撃の巨人は結局完結してしまいましたので、そんな描き方はできませんが、もしアルミン視点の物語があったら、それはそれでかなり秀逸な物語になったんだろうなと思うのです。

悲しいのはアルミンとミカサとエレンの終わり方

ただまあ、だからといって視点が変わるだけで、あの結末は変わらないんですけどね。

ちょっと悲しいのはあの終わり方ですよね。アルミンは調査兵団を引き継いで、前に進みましたが、結局、エレンとミカサの幸せを助けることはできなかった。

アルミン視点で進撃という物語を考えると、あの結末は別の重いものがちょっとありますよね。個人的には、後日談でチートなアルミンの知性によって、エレンをどうにか始祖の巨人からひっぱりだしてミカサとくっつけてほしいなって思うのです。

©諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会

勝手な願望ではありますが。

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