デカダンスはやっぱりちょっと厳しい評価をしてしまうアニメ

デカダンス
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デカダンスが終わりました。

独得の世界観とアクションが魅力的な昨品でしたが、作品としてはどうでしょう?やっぱりちょっと気になるのは、今の時代に対しての「キャラクター設定」と「テーマ」のズレですよね。

ここまでのSFでここまでの壮大さがありながら、結局世界争いはデカダンス周辺とカブラギさんに終始しており、なにも壊せていない。あれっ、というか主役ってナツメじゃなくてカブラギさんなんだね?

ナツメはさっぱりとしたキャラクターなのでとっとと成長し、話しは中盤からカブラギさんの「システムの破壊」に終始しました。これってようするに反体制的な物語なんですけど、これは、僕は個人的にはとんでもなく使い古されたモチーフだと思っています。それこそ出せと言われればいくらでも題材は出てきます。

かつて、僕たちのお父さんやおじいちゃん世代には「学生運動」というのがありました。時代としては60年代〜70年代くらいですね。世界的には革命思想というものものがあって、これに呼応してわが国でも反体制的な試みが社会問題になったりしました。しかしそれは、結局体制側の柔軟で腹黒い活動によって、空回りして自滅して失敗して終わるんです。政治的な話しは割愛しますが、この時に反体制的なスタンスというものを育んできた人たちは、学校を卒業すると各業界に流れ着きます。

その中には映画やアニメ界隈にもたどり着いたヒト達がいました。彼らが何をしたかというと、今度は作品の中に反体制的な物語を描く訳ですよね。

メジャー作品でベタなものを2つあげます。

AKIRA(漫画版)

これはもう完全に既存の価値観を覆して新たな時代を築くのだ、という反体制的な物語ですよね。ニューエイジ思想も入っているので、アキラを含む超能力者の精神領域は、かなりイッちゃってる世界になっています。そんな中で、金田はこわれゆく東京の街で新たな仲間と新たな国を作ります。

平成狸合戦ぽんぽこ

こっちは、作者の高畑勲がまあ平たく言えば学生運動に片足を突っ込んでいた「マルキスト」ですので、たぬきは、多摩センターの開発に抵抗する、反体制勢力として描かれるわけですね。

前者は新たな世界をキャラクターたちが作り、後者の作品ではタヌキたちは体制に取り込まれましたが、主人公は教訓を得て終わりました。終わり方はいろいろあるんですが、学生運動を見たことが有るクリエイターであれば、反体制というのは本当に、息を吸うように自然でありふれたモチーフでした。

さてそんな時代があったにも関わらず──最も気になる点が、なぜこの令和のコロナ下の時代に反体制と自己刷新をモチーフとして選んだのか? いや企画のスタートはコロナ前だったかもしれませんが、今の時代って、体制側も非常に多様で多面的であるから、そう簡単に倒す倒さないという論議が出来ない時代だと思うんですよね。それもあって野党は「大きなお題目を掲げて一点突破が出来ず」低迷している(あまり政治的な話はしたくないんですけど)。

で、世の人々というのはそれが感覚的に分かっている。今は、世界を壊すことよりも、自分のあり方を替えて場所をつくることに腐心する「個別対応」「共同歩調」「シェア」「相互尊重」とかの時代だと思っているんですよ。

世界的にもポリティカル・コレクトネスが広まり、体制というのは全部ひっくり返すのではなく、どう意見を出して改善するかを考えて知恵を出す時代なんです。その時代に、いちオッサン(カブラギ)の女子(ナツメ)への感謝から世界を壊す物語というのは疑問符しか浮かばない。これを仕切った人たちは世の中をちゃんと見ているのかしら?

たとえばプロメアの中村かずきは時代をとりこんで「ボーイ・ミーツ・ボーイ」をやってのけた。ああいう切り口があったらよかったのに。

ヒーローアニメ 『劇場版プロメア』は、濃密なボーイ・ミーツ・ボーイを描いてポリコレアンサーを試みる。
もしあなたが、プロメアを創ったトリガーという制作会社に詳しいコアなアニメファンであったなら、この作品はいくつか気になる点がある物になるかもしれません。トリガーの才能をたった2時間に押し込めなければならいという制限に加えて、既視感を伴うキャラ

ですがまあ、百歩譲って──別に何でもかんでも時代のテーマを反映させる必要もないので、いいっちゃいいんですけど、そうであるなら、じゃあ今度はマーケット的には、何の要素を入れてどこを狙うのか、というのを確り考える必要がある。しかしこれも、以前書いたとおり、ちょっと曖昧なんですよね。萌えなのか、アクションなのか、SFなのか、爽快なのか、日常なのか? いろいろ今の人々に刺さるモチーフというのはあるのですが、そのどれも非常に薄い。意味不明なチョイスをしている。

つまりは「時代に対応したテーマを扱っていない」「ターゲットの不明瞭なキャラ」という2点において、まったく今の時代にちぐはぐな作品だったりするんです。そして、途中から最後まで「なんでこの作品つくったの??」と僕はなりました。

とまあ、けっこう厳し目の評価なんですけど、ではなんで視聴完走したのか、というと──そのキャラとテーマ以外は、すべてが高品質に作り込まれているからなんですよね。

アクションもいいし、キャラクターデザインだっていい、世界観だって秀逸です。すばらしい力をもったクリエイターが集結していると思える。デフォルメ組長だって好きですよ? にもかかわらず、何故この展開とテーマにしたんだい? もったいない、もったいない、もったいないお化けでちゃう。こんなSF作品って、いまどきなかなかやらせてもらえないんですよ? オリジナルなのに。それをやる機会を得たというのに、無駄玉つかいやがって!という、非常にもどかしい気分にさせてくれたのが僕にとってのデカダンスでした。

ま、視聴者の勝手な戯言ですけどねー。ていうか2期やってその辺改修してくれないかなー(※ごちゃごちゃ言う割には続きが欲しい人)。

んでさ、パイプって何処行ったの?