デカダンスは「マトリックス×アルプスの少女」かも。そして面白いけど、まだ評価に困る作品。

デカダンス
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※視聴者限定:ネタバレ&デカダンス4話まで視聴前提の文章です。

今季の視聴者評価ランキングは、リゼロ2期やらポケモンやら俺ガイルやらがTOP10を行き来しておりますが、実は地味にランキング外にある「デカダンス」が気になっています。

4話まで見てギリギリな感じ。一方で今期覇権なんて単語も飛び交う。評価はけっこう分かれています。ワタシ的には──うーん何処へ向かうんだデカダンスといった感じで見続けている?

この作品、かなり気合を入れて作ってあるんですよね。しかも完全新作のオリジナルですよ、イマドキ。スベったら死屍累々ですよ。まどマギのスピンオフですらスベりかける時代ですから、オリジナルはほんと博打にちかいものがあります。

デカダンスは、そんな中でも「設定」「作画」「世界観」「シナリオ」「キャラクター」どれもほんとうに丁寧に作られています。アクションシーンの作画とかヤバいです。面白いかつまらないかで言うと「ちゃんと面白い」「よくできている」そういう含みのある答えになってしまうんですが──含みがつくということは、やっぱり若干の伸び悩みがあると感じてしまったのが辛い所。

往年の冒険活劇×デジタル世界を今風に

もちろん惹きつける部分もたっぷりあります。観ていると感じるのは、何だか懐かしい感じ。ただよう90〜00年代の冒険活劇感?加えて、設定世界は「マトリックス的二重世界」になっていて、そこからの脱出を目指しています。そこにもワタシ的には親近感。

その設定自体は目新しものではない、けれどデカダンスはそこに昨今の没入系オンラインゲーム世界──特に、スプラトゥーン的な世界を重ね合わせ、アバターで暮らす新人類と旧人類という対比にしてみせた。2話目で判明する世界観は、とってもポップで斬新でした。マトリックスは1999年らしいんですが、ああいう世界観というのは時代の感覚にあわせてアレンジされるんだろうな、なんて思いました。

ここまでとてもよく作り込まれている。

似た作品というと──

とはいえ全く新しい作品かというと、直近5年に似たようなのがちょろっとあります。ディストピアで、失われた文明と、相対する高度な文明があって、さらに全開のアクションが展開する物語というと──楽園追放 -Expelled from Paradise-とか翠星のガルガンティアとかが思い浮かびました。まあグレンラガンとかも似たような系譜だと思います。こういう世界観って定期的にありますよね。ですがキャラクターはバディモノですね。おっさんと少女のバディモノという話でいうと、楽園追放に近いものがあります。あのオッサン、最後まで何者かわかりませんでしたが(脱線)。

しかし、このデカダンス。どうも上記にあげた2作品と違う。よく見ていくと、実は昨今必須の「萌え」がない。楽園追放はアンジェラが、翠星のガルガンティアはヒロインほか快楽天ちゃん等がおりました。ですが、同作のヒロインは、ナツメちゃんです。可愛いけどね、萌え属性は控えめ。他はね、ほぼオッサン。オッサン好きには嬉しい所ですが。

萌えなし──これって結構苦しい戦いを挑んでるんじゃない? なんて思わなくもない。加えてさらなる既視感もある。おっさんと少女のお話ってそんなにあったっけ?何かに似ている。なんだろう? そうして自身を掘り下げた結果出てきたのが、こちら。

アルプスの少女が頭をよぎる?

どうもね、カブラギに絡むナツメちゃんが天真爛漫すぎて、ハイジとオンジの関係にみえちゃって。そもそも確かオンジはスイスの傭兵(其の昔、スイスは出稼ぎの為に多くの傭兵を海外に出していた)で、18世紀のスペインの半島戦争からの帰還兵だった、みたいな話があって、まあカブラギさんはおじいちゃんではないですが、戦争によって傷つき偏屈になった古参兵をハイジ・・・・・・じゃなかったナツメが解きほぐすという話しに見えちゃって。ああ、これが既視感かな、と。

もしナツメがアンジェラちゃんばりの萌キャラだったら、カブラギさん別の方向に目覚めちゃう。或いは、おっさんではなくて、ナツメと同世代の傷ついた謎男子にすることで、イマドキのボーイミーツガールにする選択肢もあったかもしれない。

でも、ナツメちゃんはハイジめいた女子で、その相手役はオンジ──じゃなくって、おっさんのカブラギさんだった。ちなみにデカダンスというのは、19世紀末のキリスト教価値観に相対する世紀末退廃主義だったりするんだけど、このタイトルの意味は、劇中の旧世界を壊す力を表していると予想されます。つまりは、ナツメちゃんとカブラギはバグとしてデカダン的活動をするっていう意味合いかな、と。

どこを狙っているデカダンスなのか?

さて、ちょっと話がそれましたが、気になるのはこのとってもよく作り込まれているデカダンスが誰に向かって作られて、何処を目指しているのか、という話です。

通常、その時時の作品というのは、時代を意識した制作をするものです。ましてやオリジナルといえば、時代を意識してメッセージを載せなければ、ヒットのしようがありません。

しかしデカダンスは今の所、そのあたりが見えていません。とっても作品はストイックで楽しいんですが──萌えを配し、アクションと設定とクオリティを突き詰めて──おっさんの復活と少女の成長を描く? え、それ誰得? いやおっさんも復活したいし、少女も成長するのは悪いことではないけれど、4話時点で感じられる情報としては、もしほんとうにその範囲の事柄でデカダンスをするようなら、けっこう厳しいと思うんですよね、デカダンス。

というか、このデカダンスというタイトルが、現在の萌えとかそういう世界にNOを突きつける意味合いもあるというなら、たぶんこのままじゃ終わらないよね?

信じたい制作力

シリーズ構成に、進撃の巨人、ヴィンランド・サガ、賭け狂いやら、モブサイコやら終わりのセラフやら、亜人やらをやった方が絡んでいるんですよね。そして、それらはどれもメッセージ性の強い名作ばかりです。そんで、グレンラガンとパンストの制作とかもやっている人だったり──その他のスタッフも錚々たるメンバーです。

ここまで丁寧につくってあって、それだけのスタッフが絡んでいるなら、ここからさらに面白いことになる──はず。

ああ、オチのないレビューになっちゃったなあ。期待してデカダンスを完走して、その後でまたレビューをすると思います。