呪術廻戦(じゅじゅつかいせん)のアニメ化が決まりましたね。放送は2020年10月2日から。
この作品ですが、元々は2017年のジャンプGIGAに掲載されていた「東京都立呪術高等専門学校」をプロトタイプとした作品で、現在週刊少年ジャンプで2018年から連載を続けています。
内容は「人の負の感情から生まれた化け物を、呪術を使って倒す呪術師の戦いを描いた現代オカルトバトル漫画」です。既に12巻までコミックが出版されており、発行部数は680万部と、全国書店員が選んだおすすめコミック2019 1位、みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞2019なども受賞しており、もう既にコミックとしてはすごくヒットした作品なんですよね。
今回はそれについて軽くヒット要因を解説したいと思いますが、その前に知らない人の為に、導入部分をwiki引用で紹介。
呪術廻戦導入
常人離れした身体能力を持つ高校生・虎杖悠仁は、両親の顔を知らず、祖父に育てられた。<要約> 祖父は、虎杖に「オマエは強いから人を助けろ」「大勢に囲まれて死ね」と言い残し、息を引き取る。その夜、虎杖は病院で呪術高専の1年生・伏黒恵に出会う。伏黒は虎杖に、彼が通う杉沢第三高校の百葉箱に魔除けとして保管されていた特級呪物「両面宿儺」(以下、「宿儺の指」)を渡すように迫る。しかし、虎杖が持っていたのは呪物の呪力の残穢がこびりついた箱であり、指そのものは、高校に忍び込んでいた「心霊現象研究会」の2年生が持っていた。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%91%AA%E8%A1%93%E5%BB%BB%E6%88%A6
<要約>伏黒と共闘し、<割愛> 呪力を持たない自分が呪霊を祓うために自ら宿儺の指を食す。<要約>なんと、虎杖は「宿儺の器」となる素質があり、それにより呪霊を祓うと同時に特級呪霊・両面宿儺が受肉してしまった。<要約> 虎杖には「今すぐ死ぬ」か「全ての宿儺の指を取り込んでから死ぬ」と言う2つの選択肢を与えられ、虎杖は「生き様で後悔をしない」ために全ての宿儺の指を取り込むことを決意する。その後、虎杖は東京の東京都立呪術高等専門学校の1学年に入学する。
コミック1巻あたりの導入は以上のようなお話です。
簡単に言うと、特殊な能力と生まれをもった主人公が、世の災厄を身体に取り込んむ。それを正義の心でもって抑え込みつつ、呪術によって化け物を倒していく。そのために学校に通いはじめる、と。
初心者には良くわからない専門用語が飛び交っていますが、コミックをみる限り、そっちは世界観要素でしかなくて、学園モノなんで簡単にいえば友情と努力で敵を殴って勝利する話です(雑・でも本当にそんな感じでもある)。
これが既に680万部とヒットコースに載っている訳ですが、作品を見る限り、それはもう当たり前というぐらい、ヒット要素が集められ、そしてそれらがちゃんと噛み合っている、良作だったりします。
ヒットの秘訣
さて、ここで筆者が考えるヒットの秘訣の一つを軽く説明します。その中に「ターゲット世代が触れてきたモノに対して+αのクオリティでさらなるモノを提示する事」というのがあります。
言葉にしてしまうと、あたりまえじゃん、というふうに感じられるかもしれません。ですが、これをクリアするのがなんと難しいことか。
たとえばなろう系や異世界モノとかって、リゼロとかSAOとかこのすばとかありますけど、あれのマネをしても後追いコンテンツは絶対にヒットしないんです。類似作品は数多出ていますが、今挙げた3つと同じ内容で超えてきたものはありません。
ファンは常に+α要素を求めていて、造り手がやらなければいけないのは、それに答えることである、という訳ですね。
呪術廻戦の+α要素
じゃあ、呪術廻戦はそれをクリアしているのか?という話ですが、これがみごとに複合技で+αのクリアをしてきている。
パッと見て呪術廻戦から感じられる、+αの要素は大きく3つあります。
まず言われているのが、大ヒットしたブリーチの要素ですね。作者はブリーチ大好きな人です。ですから、多くのキャラクターが出てきて、それらが個別に相対する群像バトルモノという点で、構成やキャラのお洒落感はブリーチに似ています。
しかし、それだけではヒットしません。二番煎じはヒットしない法則は絶対なので、ここに、別の要素を入れる必要があります。そこに出てくるのが、ハンタ要素とナルト要素です。
ナルトは高度に洗練された「和モノ系おしゃれ忍術コンテンツ」で、その世界観の書き込みや作り込み、人を捨てた人ならざる術の数々に、多くのファンが魅了された作品です。忍術というくくりで、かなりとんでもないアクションをやってのけるんですが、作り込みや書き込みがすごいので、絵としての説得力、そして爽快感やカタルシスがある。これはブリーチには無かった要素です。
呪術廻戦におけるアクションシーンの思い切りの良さ、カット割り、画作りのセンスは、ブリーチよりもナルト感あります。術だってそうです。ダイナミックな呪術の数々は、見栄を切った歌舞伎的バストアップの多かったブリーチにはない多彩さがあります。そういえば、主人公の身体に封印された両面宿儺の要素はナルトの九尾の狐ですよね。まあ、それはおまけの話ですが、とにかく、でたらめなアクションと世界観と術の数々を描ききる力──これが、ブリーチ的なノリにさらなる+αを与えています。
これだけでも、十分にすごいことですが、呪術廻戦の+α要素はそれだけにとどまりません。
これに加えて、ハンタ要素があると思っています。筆者のいうハンタ要素とはなにか?それは、世界観を形作る屁理屈に筋が通っていることです。ハンタは、お話の中にある技や術やキャラクターの強さの概念を架空でありながらも徹底的に論理的に組み上げて作品に落とし込むスタイルです。それが見ていて楽しい、読んでいて理解する楽しみがある。流石にハンタほどの解説はしていませんが、コミック欄外の作者の絵による説明を見ていると、なぜそうなっているのか、というのを本当によく考えて作っていることが分かる。
これは実はブリーチもナルトもやっていない。ブリーチもナルトも「なんかすごい技」どまり、で、理屈の解説は、そんなになされていない(それっぽい筋はとおしているけどね)。
しかし呪術廻戦はそれをハンタレベルでやっている。つまり、ベースとなるブリーチ的な熱き友情群像バトルに、ナルト的な多彩なカットやアングルや術アイディアを実現する画力、そしてハンタ的なロジックが詰め込まれている。それらを(今の所)破綻なくやりきっているんですよ。
思うのは、これは親時代を担う作者にしかできない。過去作を見てきたからこそ出来る作品作りですよね。そして、こんなものね、ヒットしないわけない。めちゃくちゃ面白いに決まってるじゃん。
つまり、四の五の言わずに見ましょうね 😃
アニメ呪術廻戦はどこまでやるんだろう?
さて、原作コミックは12巻まで出ています。アニメでどこまでやるかはわかりませんが──たぶん、8巻あたりの過去編の前まではやるんじゃないかな? 本当はワンピばりにずーっとやってほしいんですが、深夜枠なんでそうも行かないでしょう。というかキリのよいところって過去編直前しかないんですよね。
その前で切られると「さあ俺たちの戦いはこれからだ」という終わり方になってしんどい。ぜひ、8巻の過去編直前までやってほしいものです。
最後に一つ──べた褒めしている呪術廻戦ですが、じつは、さらにもう1つ2つヒット要素が隠れています。それは、時代生に関わる部分なんですが、そっちはそっちで長くなるので、またそのうち機会があればやりたいと思います。
以上、アニメ放映を目前に控えた、呪術廻戦のだらだらとした解説でした。