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進撃の巨人〜リヴァイとエレンに見る腐ることのない残酷で普遍的な関係について

進撃の巨人

まあ二人を見る側は腐ってるんですけどね(出オチ

リヴァイとエレンの関係に言及した記事を書いてみました。

ポイントは、二人は残酷で普遍的な関係かもしれないってことです。

主人公のエレン・イェーガーと、劇中最強キャラのリヴァイは、同作品の中にあってやや特殊な間柄ですよね。

出会いは強烈なものがありましたが、潔癖強キャラのリヴァイと、熱血バカのエレンは、ミカサにも見えない絆で結ばれている(読者には見えてる)。その根底にあるのは志です。二人の志は、巨人を駆逐する、という点において共通です。だからこそ今に続いて一緒に居るわけなんですが、その関係は特別であるからこその、意味を多分に含んでいます。

今回は、劇中におけるリヴァイとエレンの思惑とその関係の変化について、二人のなれそめについての内訳をそれぞれ解説しつつ、あれやこれやと記載します。

はじめリヴァイはエレンを利用するつもりで接触していた

初期において、リヴァイは優しさを時折みせながらも、掴みどころのない得体のしれない人物でした。というか調査兵団においての強キャラであるエルヴィン団長に比類する、理不尽を部下に強いるキャラクターでした。

もっとも劇中の兵団自体の目的がアレなので仕方がないともいえますけどね。

リヴァイの性質は、その巨人を駆逐するという目的の中で、ドライなまでに損得勘定を考え、時に普通の人ではハイリスクであろうという事象についても、自身が直接関わることでコントロール下に置いて利用する、というところにあります。

©諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会

劇中でいうと、エレン・イェーガーが巨人化の能力を身につけた存在だと判明した際に、多くの人々が「エレンを殺す」事を望む中で、リヴァイだけが「いざとなったら俺が殺せるから利用しよう」という判断を下します(もちろんエルヴィン団長とピクシス司令も同意した上で、ですが)。これは、実際にリヴァイがそれだけのことをやってのける強さを持っていたから出来た判断ですよね。

リヴァイだけがエレンを利用することが出来た。リヴァイがいたから調査兵団はエレンを生かすことが出来たともいえます。初期においては、リヴァイとエレンはそういう偶然が重なったドライな関係が全てでした。リヴァイはエレンに対して何の感情移入もしておらず、単なるコマの一つとしか考えていなかったと思います。

そして、それは少しづつ変化をします。

利用する中でエレンに心をよせるリヴァイ

劇中、リヴァイはエレンのバカさ加減と熱血具合を確認します。エレンの行動動機は極めてシンプルです。彼の目的は、理不尽な世界にあって「父を奪い母を殺した、巨人という事象を世界から駆逐すること」ですよね。

その情熱は、定期的に襲撃する巨人さんのおかげもあって、枯れることなく維持され続けます。これを見たリヴァイは途中から、エレンに対する役割を変えていきます。

すなわち、巨人化して暴走したら即殺す、から、この無鉄砲なバカをどうやってコントロールするのか、という視点に切り替わります。個人的に思うのは、これヤンチャな熱血新人が入社してきた時の、上司の考えるソレと同じかも、と。

リヴァイ兵長の素晴らしいことは、他の上官キャラとちょっと違うところにあります。リヴァイ兵長は、あの強キャラでありながら、ただ暴力に逃げるのではなく、常に自分の言葉で語る事ができるキャラなんですよね。兵長は、ケーススタディを通してエレンに伝えます。「お前は間違っていない」「俺でもそうする」「お前は間違っている」「それはだめだ」。指示が明快で的確です。さらにタイミングもすばらしく、セリフのどれもが心に響きます。これがエルヴィン団長あたりだと「人類の存亡をかけた〜」とか「心臓を〜」といった、煽り文句に終始するんですけど、リヴァイは現場にいるからか、よりエレンによりそった言葉なんですよね。

彼はエレンに対して徹底的なまでに共感性の強いメッセージを送り続けます。「さも自身がかつて経験した事をふまえて」いるかのように。

©諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会

たぶん、リヴァイはエレンの中に若くバカだった自分を見ていると思います。エレンの目的意識や行動動機に「わかりみ」を感じて、その文脈にのっとって言葉を発している。その過程でリヴァイ自身もエレンに共感をしている。「コイツはあまっちょろいヤツだが、巨人に対する憎悪だけは買える」と。

そして、少しづつ感情移入の度合いを強めていったと思っています。

エレンにとってリヴァイは立ち向かうべき大人の壁

他方エレンは、リヴァイの事をどう思っていたのでしょうか?

初期は、数多いる兵団の上官の一人としか思っていなかったですよね。それは見下してみていたとか、ナメていたとか、そういう話ではなくて、会社勤めや部活に入った新人が、居並ぶコワモテの先輩やら上司やらを見る目線みたいなものです。

エレンは基本的に、アホで、しかもちょっとワンコめいたところがあるので、すげーヤツにはすぐに尊敬の眼差しを向けます(アニとかライナーとかね)。表向きは、熱血バカの情緒そのままに、強がってみせることもありますが、基本的に彼は「喜怒哀楽」がダダ漏れな素直キャラですから、ある時からリヴァイに対しても「あ、この人すごい///」と、完全に白旗を挙げて従います。

これ、体育会系縦割り社会に存在する、先輩と後輩の関係そのままですね。というか僕は、そこに「儲かっているブラック企業における狂犬上司と若手エースの爛れたウィンウィンの関係(ニッチな例え)」を見いださずにはいられないんですけど、その話はちょっと割愛します。

さて、初期においてエレンは、前述したようにリヴァイによって命を救われています。さらにリヴァイ班は、エレンをつなぎとめる鎖の役割を果たしています。エレンは、よく上官のリヴァイや周囲に考えなしにいろいろと意見を言います。が、そのたびに調子にのってんじゃない、と「ボッコボコ」にされます。

©諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会

これは、大人社会によくある禊ぎですよね。成人の義みたいなもんです。熱血だけじゃ物事は回らんよ、ということを身を以て教え込んでいる。

そして、エレンは──しつけられたワンコくんは理解するのです。ああ──リヴァイ班というのは、リヴァイ兵長というのは、自分が大人になるための壁なんだ、と。

二人は年月を経て変化する

エレンは、リヴァイ班にあっても初期はしばらく、あまちゃんの熱血バカでした。もちろん、それは──劇中後半までなんのかんのと引きずるんですが、それは主人公ゆえに仕方無い。

ただ、リヴァイとの関係は、女型の巨人との闘争をへて変化していきます。すなわち、再三の自分の判断の甘さによって、リヴァイ班を構成するメンバーの命が失われたコトによって。

この喪失経験は、以後ずっとエレンを苦しめているのは、見たとおりですね。このへんはほんと展開うまいな〜と思います。

そして、同時にエレンは気づきます。

おそらく、リヴァイ兵長というのは、自分の何倍もの無力感でもって、部下や仲間を犠牲にして、生き残っててきたのだと。そうして、今の立場に立ち、今のメンタルをもっているのだ、と。

©諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会

結果、兵団大好きで組織に従順なワンコめいたところのあるエレンは、まんまとリヴァイに心酔し、取り込まれたのです。

あらゆる物語において幾度となく繰り返されてきた普遍的な関係

さてこの先輩と後輩というか、師弟というか、そういった上下関係というのは、古今東西の物語のそこかしこに存在しますよね。むしろ、シリアス系の作品で、この手の上下関係が無い作品は駄作なんじゃないかと思える。

大きな枠組みでいえば、エレンとリヴァイの関係も、そういった物語関係類型の一つなんですよね。だからまあ、どんな形であれ、二人のようなキャラ配置がなされた時点で、二人は特別な関係なのです。これはミカサには申し訳ないけど仕方がないものです。ま、他のと違って若干ドライな関係ではありますけど。

もちろん、それに実感とリアリティを与えるのは、物語の展開ですよね。進撃の巨人の作者は、そのあたりを本当に丁寧につくってくれたな、とつくづく思う。

そして、エレンはリヴァイをリヴァイはエレンを、それぞれ自身と同一視しています。キャラクターとしての出自や性質は違います。性格も全く違いますが──根本的なところで男の子として、たぶん同じだよな、と互いに思っています(キチガイ具合とかソッチ方面の話で)。その関係は長兄が末弟の差をいつまで立っても埋められないように、息子が父親との時間的距離を、永遠につめられないように、ずっとそのままの関係で未来へと続いています。

幾度となく、あらゆる物語で繰り返された師弟関係、上下関係がここにあるんです。

しかし、同時に、僕はこの二人の関係の先にある残酷な結末を想像せずにはいられない。

二人に用意された残酷な結末の香り

実はこの師弟関係や先輩と後輩の関係というのは、物語においては、だいたいちょっとアレな終わり方するんですよねぇ(濁した)。

二人は師弟であって、戦いのパートナーや友達になることはない、並行のままズレてゆく関係です。リヴァイとエレンは圧倒的なまでの先輩と後輩であり、師弟です。エレンにとってリヴァイは乗り越えるべき存在であり、リヴァイにとってエレンは、自身が立つ高みへと引き上げる事を強いられた存在です。

そして──良くある師弟関係の結末の通り、もし、エレンがリヴァイに並び立つとすれば、それはリヴァイが死んだ時なんですよね。

©諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会

師弟というのは、弟子が師から何かを受け取ることで関係が成就されます。しかし、大体においてそこには、年長者側の死がついてまわる。これは古今東西にある物語の鉄板の構成ですよね。必殺技を与えて生き残ったのは、るろ剣のひこにゃんくらいしか思い当たらないし(まれに生き残るやつおる)。

エレンは大人になった時、リヴァイから何かを受け取るでしょう。しかしそのときリヴァイはサクリファイスされる。そうすることが、連綿と繰り返された先輩と後輩の物語の定石である──これ、進撃みたいな重厚ながらも物語テンプレに忠実な作品だと結構不可避だと思うんですよね。

悲しいかな二人の関係の結末には、こういう残酷な香りがするんです。

え、悲しい? そういうのいらない? やめてくれって?

ごめんなさいね、いちおうフォローすると、リヴァイの死の可能性については、今の所明確なものはないから、大丈夫かもしれない、とも思っている。ひこにゃんばりにフラグブレイクして、生き残ることも十分にありえる。構造的な師弟関係以外にフラグが立っていなかったりしますしね(それはちょっとまた別の所で言及したいと思います)。いずれにせよ、二人の特別な関係は、特別であるがゆえに、二人だけの特別なドラマを物語の中に生み出すと思っている。

その方が絶対面白いしね。

以上のお話が「エレンとリヴァイの残酷で普遍的な関係」についての解説です。

さて──

進撃の巨人は結末へと進撃していますが、エレンとリヴァイの関係がどんな結末を迎えるのか、引き続き気にしてみていきたいと思います。

残酷な結末が、物語を素晴らしくドラマチックにしてくれることを願うばかりです。

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