進撃の巨人が佳境に入ってきましたね。
エレンとアルミンとミカサが海にたどり着いて、その向こう思いを馳せて終わった第三期。そこから一点、硝煙と血の匂い香る産業革命後、第一次大戦に突入しようか、という感じの世界観になってしまいました。
ライナーはマーレに戻り、やり残した仕事と後悔で神経をすり減らし、大人になったミカサやアルミンたちは、自国を守るために、対巨人戦ではなくて、血で血を洗う人間どうしの戦いに身を投じます。
さて、そんな中で一人暗躍するエレンがどうも気になったので、つらつらと考えを書いてみました。コミック版まで読んだ上での一部ネタバレ注意の、身勝手な雑感になっておりますので、ご注意ください。
進撃は面白いが強すぎるエレンがつまらない
というか、どんな物語もそうなんですけど、作品をまとめにかかる頃になると、主人公が無双しはじめるじゃないですか?
あれ、私はどうも苦手なんです。あれが始まると主人公がちょっとつまらなくなると思っている。
もちろん、進撃の巨人は全体としてのチープ化は巧みに回避してはいるんですが、それでも、ちょっとエレンというキャラクターが、どうもつまらなくなったと感じる。
理由はわかりきった話なんです。
エレンはヒストリアと接触したことで、巨人の謎に気づき、自分が愛した世界を救うために覚悟を決めちゃった。そして迷いの無い達観した存在になってしまうんです。
ようするに、かつては等身大の苦難や迷いを抱えてそれに立ち向かっていたエレンが、迷いも苦痛も感じない、まったく感情移入できない存在になってしまったんです。
そこが、我らがエレンに面白みがなくなった原因です。
主人公はのたうち回ってナンボ
ちなみに、優れた作品である進撃の巨人はそこを回避する手段もしっかりと講じています。
かつてのエレンやミカサとおなじような、迷い葛藤する存在としてガビ・ブラウンや、ファルコ・グライスを置いて、その代わりとした。または相対的に弱体化したリヴァイなんかに満足に戦えない葛藤を付与して、読者をハラハラさせたりなんかしてみたり、周辺キャラクターにかつてのエレンの代わりをさせて、ハラハラドキドキを維持させている。
そのへん素晴らしいので、全く問題ないといえば無いんですけど──しかし、しかしですよ、やっぱり我らが主人公は、イカレ野郎のエレンな訳ですよ。
あの、まったく感情移入できないバケモノになってしまったエレンに、やっぱり、苦しみのたうち回る姿を見せてほしいと思うのです。
リゼロのスバルくんの話とかでもいいましたが、やっぱり物語が面白くなる瞬間というのは、主人公がめちゃくちゃ苦労している瞬間なんですよね。
これはもう本当に間違いない。
例えば、アルミンが黒焦げになって生きるか死ぬかの瀬戸際にあるときの、エレンは輝いていました。あの味方殺しをしかねない、殺伐とした「命を選ぶ瞬間」にこそ、進撃の巨人の面白さが詰まっているんです。
対して、今のエレンは「やることやったら、いつ死んでもいいけどねー」的な開き直りがあってどうもつまらない。
最も、振り回される嫁のミカサはたまったもんじゃないですけどね。
今後の流れは分かっているけどやっぱり見たいエレンの苦難
今後の流れは、巨人化して世界平地化祭りに突入したエレンを奪還する話になっています。
そこでは、犠牲も出るでしょうが、エレンは戦う側ではなくて、助けられる側になっちゃって、ちょっと主人公とは違う感じになっちゃいましたよね。
それはそれで、進撃の巨人の魅力を損なうようなものではないですし、そんなことでは揺るぎないくらい、面白さのギミックを詰め込まれているのですが、それでも、引き続き葛藤をするエレンというものを、ちょっとまた見たいと思っているのです。
このままでも十分歴史に残る傑作になるんですけどねー、私としてはラストにエレン絡みで、あの達観したスカシ野郎になったエレンが、再び動揺してのたうち回るような、もうひとヒネリ「究極の選択」を迫るような展開がほしいなー、などと思っています。